『前賢故実』

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総合

前賢故実

全十巻二十冊。

上古から南北朝時代に至る日本の歴史上の人物571名を一人ずつ時代を追ってまとめていたもので、人物の肖像に加え漢文で記された略伝が添えられている。成立年代は、巻末の後序の記載から文政初年起筆、明治元年(1868)完成と思われていたが、近年、新たな研究文献が発掘されるに及び、天保14年(1843)には初編2巻4冊が刊行されたということ、その後おそらくは経済上の理由から刊行が進まず、明治元年にようやく全巻刊行という運びになったであろうことが指摘されている。『前賢故実』は、門下の松本楓湖や渡辺省亭はもちろんのこと、小堀鞆音、前田青邨、小林古径や彫刻家佐野昭にも、その図柄が踏襲あるいは借用され、明治期の歴史画(彫刻)に多大な影響を与えたことが知られる。また、『前賢故実』は、明治期の浮世絵にもしばしば図柄が借用されている。その代表的な絵師としては、月岡芳年、小林清親、尾形月耕などがあり、明治期の浮世絵版画における歴史画の潮流を形成している。

(菅原真弓)