《翻刻》

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総合

和歌の浦には名所がござる、一にごんげん、二に玉津嶋、三にさかり松、四にしほがまや、天のはし立、切戸の文殊、もんじゅさんはよけれども、切といふ字が気にかかる、サアサなんとしようか、どうしようぞいの

隅田川には名所がござる、ぬしを三めくり、吾妻橋にゑんのはし場をまつち山、と〇〇きおもひはアノかねがふち、土手のさくらはよけれども、うつろふ色が気にかかる、サアサなんとしようか、どうしようぞいな


〔現代語訳〕

和歌の浦には名所がある。一つは権現、二つ目は玉津島、三つ目は枝が垂れ下った松、四つ目に塩釜、天の橋立、切戸の文殊菩薩。菩薩様は良いけれども、「切」という字が気にかかる。さぁ、どうしたものか。

隅田川には名所がある。主に三囲神社、吾妻橋に縁の橋場を待乳山、〇〇〇〇思いはあの鐘ヶ淵。土手の桜は良いけれど、移ろってゆく色が気にかかる。さぁ、どうしたものか。