映画のフィルム filmについて
マキノ・プロジェクトでは、映画の基盤媒体であるフィルムも保存対象としています。この映画フィルムを物質として管理するためには、フィルムに写された映像情報の前に、サイズやフィルム・ベースの材質、メーカーと製造年、色彩の有無などを把握する必要があります。 【サイズ(フィルム幅)】 8mm、9.5mm、16mm、17.5mm、28mm、35mm、70mmなど。 35mmは劇場用の一般的映画サイズ。 70mmは大型映画、35mm以下は小型映画と呼ばれる。 【フィルム・ベースの材質】 可燃性フィルム Nitrate film ― ニトロ・セルロース 白黒映像の表現力、映写上の耐久力に優れ、映画誕生から1950年前後まで利用された。発火性、引火性が強く(“映画史の原罪”と言われる)、最終的には粉化へと自己分解する宿命をもつ。そのため、可燃性フィルムを発見した場合は、不燃性フィルムへの転写と、危険物扱いを考慮したうえでオリジナル・フィルムの保存が求められる。
不燃性フィルム Safety film ― アセテート・セルロース(トリアセテート/ダイアセテート)、ポリエステル 可燃性フィルムの“原罪”への対応策として登場し、小型映画(17.5mmを除く)や、1950年以降のフィルムの大半は不燃性(Safetyの文字がフィルムエッジに記されている)。可燃性フィルムと比較すると耐久力に乏しく、吸湿性に富んでいるため、伸縮・硬化が激しい。また、高温多湿の環境下では自然劣化を開始し、湿気に反応したアセテート・イオンから酢酸が形成され、カラーの退色やフィルムの劣化を進行させる“ヴィネガー・シンドローム”をおこす。この症状にかかったフィルムから放たれる酢酸は、他のフィルムへと吸着・伝染するため、収蔵庫内感染を未然に防ぐ必要がある。
【メーカーと製造年】 コダック KODACK、ゲバルト GEVAERT、富士フィルム FUJI、コニカ(小西六、さくら)など。製造年は、記号化されてフィルムのエッジに記されている。 【色彩の有無】 一般的なカラー、白黒といった分類に加え、フィルム自体への着色や染色加工など。
これらの要素を確認した上で、適切な修復、カタロギング、そして保存を心掛ける必要があります。 |