A2-5 大井子と水論争

「賢勇婦女鏡」 「大井子」
絵師:国芳 判型:大判錦絵
出版:天保14年(1843)~弘化4年(1847)
所蔵:立命館ARC 作品番号:arcUP4408.

【解説】
 本作は、A2-4と同様に大井子が火打ち石で火をつけようとしている伝法な女性として描かれているが別の説話が書かれている。
 背景には、大井子と村人が水をめぐって口論し、大井子の田に水を割り当てなかったとき、夜に大石で自身の田にのみ水が来るようにした。その大石は、百人がかりで動かそうにも動かせず、大井子に許しを請いに行ったはなしが書かれている。その大石は「水口石」と呼ばれ、現在も安閑神社(滋賀県高島市安曇川町三尾里326-2)の境内に伝承の石として残されている。
 『古今著聞集』には、「件の高島のおほゐ子は、田などおほく持ちたりけり。」と田んぼを多く所有しておることが書かれている。しかし、大井子がなぜ多くの田を所有していたことについて詳細に書かれていない。一説としては、国から大力の女性である大井子の血統に与えられた膂力婦女田と考えられている。
 参考図には、夜に大石で水流を自分の田へ流れるようにしている大井子の水争いの場面が描かれている。(勝)
【参考図】「木曽街道六十九次之内」 「廿三」「岩村田」「大井子田畑を潤す」
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*国芳「木曽街道六十九次之内」 「廿三」「岩村田」「大井子田畑を潤す」(大英博物館,BM-2008,3037.14723)