B01大江戸芝居年中行事

「大江戸しばゐねんぢうぎやうじ」「目録」
English Commentary
判型:大判/錦絵
出版:明治30年(1897)東京 版元:長谷川寿美
資料番号:arcUP2039 所蔵:立命館ARC.

【翻刻】
目録口上
御区中様(おんまちぢうさま)益々(ますます)御機嫌克(ごきげんよろしく)被遊御座(ござあそばされ)恐悦至極(きようえつしごくに)ニ奉存候(ぞんじあそばされそうろう)随(したがひ)まして大江戸芝居天保年間の末より五拾有余年 猿若町参町にて盛んなりしが 其頃の招き釣看板等 見る事なく昔のさまのなつかしき折に 幸ひ御好劇家の御進めに基き 大江戸芝居年中行事と題し 二十五番の数々は 第一仕始(しぞめ)の式三番。俳優の年始。猿若の宝物。七福神。評判聞。黒札。鬮取。乗込。二立目。幕外の口上触。楽屋入。読立。感亭流。板囲。場釣提灯。大提灯。大津稲荷。紋看板。御目見得。木戸羽織。猿若狂言。さし出し。序開。御披露口上。寄初メの式等 此外近々のこらず出板仕り候間 何卒御求被下候様 伏而奉希上候以上
      月 日         版元敬白

【解説】
 「大江戸しばゐねんぢうぎやうじ」は、明治30年(1897)に上梓された、全部で26図目録1枚の揃物である。
 明治維新以来すでに30年を過ぎ、徳川時代へのノスタルジーが顔をもたげるようになり、「よき徳川時代」を懐かしむ風潮に応えた作品が企画されるようになった。本揃物もその一つで、江戸時代の三座体制の歌舞伎興行の慣習を取り上げて描き解説を加えたものである。
 1800年前後に、江戸や大坂では、舞台でみられる役者や狂言だけでなく、小道具や機関、さらには楽屋裏まで説明する「歌舞伎鑑賞案内書」が出版されている。その先行作としては、『羽勘三台図絵』が知られているが、本格的には、大坂で『戯場楽屋図会』(1800年)が出て、篁竹里『絵本戯場年中鑑』(1803年)、『羽勘三台図絵』を引継いで発展させた式亭三馬『戯場訓蒙図彙』(1803年)というように続々と世に送り出された。本シリーズは、こうした既刊の出版物も参考にしつつ幕末の劇場興行の実態を描いたものである。(a.)

【用語解説】
羽勘三台図絵』、『戯場楽屋図会』、『絵本戯場年中鑑』、『戯場訓蒙図彙