3 酒呑童子絵巻
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作者:未詳
巻子5巻。
制作:1650年頃
資料番号:arcHS03-0008源頼光とその部下である四天王、ならびに平井保昌による酒呑童子退治を描いた絵巻である。酒呑童子の絵巻は、古くは十四世紀後半には成立したとされる「大江山絵詞」(逸翁美術館)に見えるが、謡曲『大江山』、御伽草子『酒呑童子』、さらには古浄瑠璃や本作のような絵巻によってよく知られる物語となっている。絵巻としては、その品質が最も高かった十七世紀半ばの作だけに、料紙・絵の具とも最高級のものが使われており、五巻で省略されることなく伝わってきた。本文は、慶応本に近いが、本作品が先行するものとみられる。
本作品は、その来歴が数奇である。ボストン美術館の日本コレクションの中枢を占める重要なコレクションの持主であった、ウィリアム・S・ビゲローが生前に親友に贈与したものである。その後その親友の子孫は、ヨーロッパに渡り、ベルギー、フランスなどを経て、チェコのプラハに移住し、そこからARCが購入するまで家宝として大切に守ってきたものである。その間、第二次大戦では、ベルギーがナチスによって占領されたときにも、見つからないよう隠し通し、略奪されずに済んだという。