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練物姿を描いた合羽摺

 合羽摺の作品の中に「祇園御輿はらひ ねり物姿」とのタイトルを持つ作品が数多くある。
 「祇園御輿洗(はらい)」とは、祇園祭の一連の行事の一つで、山鉾巡行に先だって、現在では7月10日に八坂神社の三基ある御輿の内、少将井(せいしょうい)の神輿一基を運び、鴨川の水で清める儀式をいい、また、本祭のあとの28日に再び鴨川の水で清めて、拝殿に戻るのも同じく御輿洗と呼ばれている。

 この御輿洗の行事に合わせて、祇園では練物を出すのであるが、練物とは、いわば芸妓の仮装行列である。『都林泉名勝図絵』(寛政12年)の祇園の条には、

(五月晦日)祇園鴨川の女伶妓婦の輩、風流に姿を優して花の盛の匂ふが如く、身には錦繍を絡ひ、あるは女も男の風俗に変り、若も老の形となり、前はやし後囃子に糸竹の音うるはしく、これを見んとて社頭二軒茶屋、薮の下、祇ぎ園をん町まちの群集は稲麻の如く、尺地の間もなかりける。
又六月十八日も練物を出して群参晦日に異ならず

とあって、現在の山鉾巡業にも匹敵する大変な人気のイベントであったことがわかる(図2)。これに合せて、いわばブロマイドとして芸妓の姿絵を売り出したのである。

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