降魔

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こうま


画題

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解説

画題辞典

降魔は如来八相の一なり、抑も釈尊の加那城に於て尼連禅河に成道せらるゝ時、悪魔は或は妖女を遣わし、様々の妖艶の狂態を演じて之を誘い、又は威嚇を以て之を襲う、然るに弓箭変して蓮華となり、害する能わず、乃ち諸魔悉く逃げ去るという。是れ実は心内の煩悩に打ち勝ちたることを形を以て示したるなり。印度アジヤンタ岩窟内にある壁画はこの降魔を画きしものゝ、最も名高きものなり。

本朝にては雪舟の作松浦伯爵家にあり、その他近代の諸作多し。

(『画題辞典』斎藤隆三)

東洋画題綜覧

釈尊菩提樹下にあつて成道の法座とし結跏趺座するや、悪魔交々来つて之を妨げ之を誘ひ或は威嚇し或は暴行す、釈尊泰然として動かず、遂に之を降して無上正覚を得た、これを降魔といふ。

魔に三女あり、容貌極めて端正にして妖冶巧媚能く人を惑し天女の中に於て最も第一と為す、薫するに名香を以てし、身に瓔珞を佩ぶ、一を染欲、二を能悦人、三を可愛楽と名く、魔王諸女に告て言はく、世間今沙門瞿曇あり、身に法鎧を被り、自在の弓を執り、知慧の箭を鏃し衆生を伏して我が境界を壊さんと欲す、我若し如かずば衆生彼を信じて皆悉く帰依し我が土則ち空しからん、未だ成道せざるに先ち往て催挫せんと欲す、是に於て魔王手に強弓を執り、又五箭を持ち、男女眷族と倶に彼の畢波羅樹下に往き牟尼を見るに寂然として動かず、時に魔王自ら思へらく、我が強弓利箭并に三女を以てして瞿曇の心を乱す能はず、今当に衆を集め力を以て脅迫すべし、時に諸軍衆忽然来りて虚空に充満し形貌各々異り或は戟を執り、剣を操り、頭に大樹を戴き手に金扞を執り、種々戦具悉く備はる、或は猪魚驢馬師子竜頭熊羆虎兕及諸獣或は一身多頭、或は面各々一目、或は衆多の目あり……是の如き諸悪類の形あり挙て数ふべからず……魔軍菩薩を囲繞し大悪声を発して天地を震動す、菩薩心定まり顔に異相なく、猶ほ師子の鹿群に処するが如し、魔王は菩薩恬然として異らざるを見魔心慙愧して即ち天宮に還帰し群魔憂感して皆悉く崩散せり。  (因果経三)

釈迦降魔の芸術としては、蘭印ボロブドールの彫刻最も有名であり、印度アジアンタの壁画また有名であり、我朝では雪舟にも其作があり。(松浦伯爵家旧蔵)なほ近く勝田蕉琴筆(第一回文展出品)木村武山筆(第七回院展出品)がある。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)