葵の上

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あおいのうえ


画題

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解説

東洋画題綜覧

謡曲の名、『源氏物語』葵の巻を骨子とした氏信の作、葵の上が産褥にあると加茂の車争ひで葵の上に恥ぢしめられ、儚なく消えた六条御息所の生霊が現はれて、散々に葵の上を悩ますのを、父左大臣横川小聖を招して読経を請ひ、これによりて御息所の生霊成仏得脱して退散する。その一節、

それ娑婆電光の境には、恨むべき人もなく悲むべき身もあらざるに、いつ扨浮かれそめつらん、唯今梓の弓の音に、引かれて顕はれ出てたるをば、如何なる者とか思し召す、是は六条御息所の怨霊なり、我世に在りしいにしへは、雲上の花の宴春の朝の御遊に馴れ、仙洞の紅葉の秋の庭は、月に戯むれ色香に染み、はなやかなりし身なれども、衰へぬれば朝顔の、日影待つ間の有様なり、唯いつとなき我心、物憂き野辺の早蕨の、萌え出でそめし思ひの露、斯かる恨みを晴らさむとて是まで顕はれ出でたるなり、「思ひ知らずや世の中の、情は人の為めならず、我人の為めつらければ、必らず身にも報ふなり、何を歎くぞ葛の葉の、恨みはさらに尽きすまじ。(下略)

源氏絵としてよく画かるゝも、『車争ひ』(車争)を以て主眼とする。

織田観潮筆  第十一回帝展出品

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)