花漆

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はなうるし


画題

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解説

東洋画題綜覧

播磨の国室の津の遊君、『長門本平家物語』に載せらる、名は欠いてゐるが、その歌から花漆と呼ばれてゐる。

建礼門院立后の初、入道浄海、皇子の誕生を望み、これを安芸の厳島に祈り、毎月自ら出でて祭る、一日船を宮津に泊す、室の遊女各々小船に棹して来り、歌舞を奏しかづけものを得て帰りゆく、既にして夜は更け月は高く輝いて海面は鏡のやうである、一遊女月に棹して入道の船側に到る、忽ち愁を含んだ声で唄ふ、やゝ暫くして唄うて曰く

はなうるしぬる人もなさ我が身かな室はあれどもなにゝかはせん

と、入道偶ま睡より覚めてこれを聞き、心に感じ起つて船を出で遊女を招き、越中二郎兵衛に命じて巻絹百巻沙金百両を与へて纒頭とした。

菊池容斎『前賢故実』の中に之を図してゐる。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)