糸瓜

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へちま


画題

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解説

東洋画題綜覧

糸瓜は胡芦科の植物で、熱帯アジアからアフリカ辺の原産、此の果蓏の繊維が網状をなし強靭であつて『たわし』に作られたり、ブラッシユに用ひたり用途が多い、一年生の蔓生植物で、夏、黄色の雄花雌花を開いたり、その葉の形が蜀葵に似てゐたり、その蔓がよく伸びて他の植物に絡つたりするところは他の瓜類と異らない、唯瓜が長く伸びる関係上、西瓜や南瓜のやうに地上を這はせず、支柱を立てゝ絡はらせる、信濃では『とうり』と呼んでゐるが、糸瓜の和訓『いとうり』の転訛である、長いものになると三四尺に達する。

     糸瓜の辞     也有

むくつけきふくべも、瓠といへばやさしみあり、花はまして夕顔の人あきてよそほへるを、此のものゝ謟らはず浮世をへちまと名のりけるより、源氏のお目もとゞまらずして、歌よみは此名にもてあつかひて、こちの料理にはつかはれずとて、ほがらかし捨たるを、やがて俳諧師の拾ひとりて、おのが垣根に這はせたるなり、その味ひ美ならねば、鴉もぬすまず、蟻もせせらず、鉢坊主もみかへらねば、隣の人をも疑はず。

草苅のそしるを聞けば糸瓜かな

猶いみじき疝気薬なりとて、殊に此の翁の愛するにぞありける、むかし水の流れに光さして楊柳観音のありし所に知られ、栗栖野の柑子には、きたなき主の心をさへ知られつ、白壁のらくがきには、医者の家なる事も知らるべし、されば色をも香をも知らざれば知らず、知る人ぞ知りぬるぞかし

垣にへちまさてはあるじは疝気持  (鶉衣)

糸瓜は俳画として画るゝもの多いが、これのみを画いた作もある、抱一によく之を見る、近く左の作がある。

高崎興筆   第十七回院展出品

藤井観文筆  第十三回帝展出品

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)