瀟湘八景

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しょうしょうはっけい


画題

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解説

(分類:中国)

画題辞典

支那湖南省にあり、洞庭湖の一廓にして、青草湖の南に列る湖水を瀟湘という、此地の勝景八を選びて瀟湘八景と称す、即ち左の如し。瀟湘夜雨、洞庭秋月、煙寺暁鐘、遠浦帰帆、山市晴嵐、江天暮雪、漁村返照、平沙落雁宋の代宋廸始めて之れが図を作り、玉澗亦尋いで之を画く玉澗が八景を詠ぜる詩左の如し。○瀟湘夜雨古渡沙平漲水痕、一蓬寒雨滴黄昏、蘭枯蕙死無尋処、短些難拓楚客魂○洞庭秋月四面平湖月満山、一阿螺髻鏡中看、岳陽楼上聴長笛、訴尽崎嶇行路難○煙寺晩鐘鐘送斜陽出暮山、遥知煙寺隔前湾、山翁莫怪皈来晩、欲待峯頭月上還○遠浦帰帆無辺刹境入毫端、帆落秋江隠暮嵐、残照未収漁火動、老翁閑自説江南○山市晴嵐雨挹雪脚斂長波、隠々残虹帯晩霞、尤好市橋官柳外、酒旗揺曳客思家○江天暮雪万里江天万里心、瓢々花絮灑平林、橋横路断馬蹄滑、更説藍関博不禁○漁村返照一江晴日満砂汀、賣与魚来酒半醒、蓑笠未乾榔板静、一声横笛数峯青○平沙落雁点々随群旧処栖、蓼花蘆葉暗長堤、天寒水冷難成宿、猶自依々怨別離爾来支那に於て又本邦に於て画家の筆を此画題に染むるもの挙げて数ふべからず、或は一国に之を収め、或は八幅に分つて之を画く、古来名画として世に知られたるもの大略左の如きものあり。

牧渓筆(秋元子爵旧蔵)、啓雪記筆(同)、雪村筆(京都禅居庵所蔵)、同(井上侯爵所蔵)、同(佐野伯爵所蔵)、狩野元信筆(京都禅居庵所蔵)、相阿弥筆(徳川伯爵所蔵)、相阿弥筆(福岡子爵所蔵)、相阿弥筆(岡崎正也氏所蔵)、相阿弥筆(京都守屋孝蔵氏所蔵)、狩野永徳筆(黒田侯爵所蔵)、狩野山樂筆(近江観音蔵所蔵)

此他にも古くに周文及相阿弥の筆あり、後には狩野探幽、常信等の筆あり、明治年間に至りては、第五回勸業博覧会に橋本雅邦之を画き、第六回の文展には寺崎廣業、横山大観共に之を図して世評喧しかり、八景の図、元来平遠山水なるを以て、従来画くもの多くは横幀とし又絵巻とし或は一図とす、其竪幅に構図せる大観が作の如きは寧ろ珍とすべし。

(『画題辞典』斎藤隆三)

東洋画題綜覧

瀟湘八景は、支那湖南省にある、即ち湖南瀟湘の二水が落合つて洞庭湖に注ぐ所で、青草湖の南に列なる湖水を瀟湘といふのである、此地の八勝を撰んだものが、それで

瀟湘夜雨洞庭秋月煙寺晩鐘遠浦帰帆山市晴嵐江天暮雪漁村返照平沙落雁

で、初めて之を筆にしたものは、宋の宋廸であり、これによつて世に名高くなつたといふそれから宣和御府に董源の瀟湘の図があり、我が国では雪舟親しく其地を踏んで之と描き足利義政に献じたものがあつたが応仁の乱に灰燼に帰したといふ、なほ、八景の作としては王礀と牧谿の作が有名であるが、王礀の作は兵火の為めに焼かれて現存するもの少いが、これに題された七言絶句は世に伝へられてゐる。曰く、

     山市晴嵐

雨施雲脚歛長沙、隠々残虹帯晩霞、最好市橋官柳外、酒旗揺曳客思家。

     遠浦帰帆

無辺刹境入毫端、帆落秋江隠暮嵐、残照未収漁火動、老翁閑自説江南。

     洞庭秋月

四面平湖月満山、一阿螺髻鏡中看、岳陽楼上聴長笛、訴尽崎嶇行路難。

     瀟湘夜雨

古渡沙平漲水痕、一蓬寒雨滴黄昏、蘭枯蕙死無尽処、短些難招楚客魂。

     遠寺晩鐘

鐘送斜陽出暮山、遥知煙寺隔前湾、山翁莫怪婦来晩、欲待峰頭月上還

     漁村夕照

一紅晴日満沙汀、売魚書来酒半醒、簑笠未乾榔板静、一声横笛数峰青。

     平居落雁

点々隋群旧処棲、蓼花芦葉暗長提、天寒水冷難成宿、猶自依々怨別離。

     江天暮雪

万里江天万里心、飄々花絮洒平林、橋横路断馬蹄滑、更説藍関転不禁。

と、玉礀の作は僅かに三軸を現存するのみ、牧谿には大小八軸十六幅あるが、大幅は五幅現存し小軸の方は所在不明である。  (高木文氏瀟湘八景絵と其伝来の研究による)

此の外、瀟湘八景の作主なもの左の通り。

啓書記筆     秋元子爵家旧蔵

秀峰筆    東京帝室博物館蔵

雪村筆    京都禅居庵蔵

同      井上侯爵家蔵

狩野元信筆  京都禅居庵蔵

相阿弥筆   徳川伯爵家蔵

狩野山楽筆  近江観音寺蔵

橋本雅邦筆  第五回内国勧業博出品

寺崎広業筆  第六回文展出品

横山大観筆  同上

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)