瀑布
ばくふ
画題
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解説
画題辞典
其響百雷の一時に轟くが如く、千斛の水。九天の上より九地の下に直落し来る。瀑布の壮観に心神を爽快ならしむるぺく、その雄大にして崚烈なる光景に古往今来画家の筆に上りて幾多の名画を世に出せり。
伝王維筆瀑布図(京都智積院所蔵) ヽほ我が邦に伝はる支那の瀑布国の尤品にて
伝金岡筆那智瀧図(根津嘉一郎氏所蔵)
は倭画に瀑布を図せる最も古きものなるべし。
筆者不明滝図(京都智積院所蔵国宝)玉潤筆瀑布図(松蔵伯爵所蔵)雪舟筆珍田瀧(高田慎蔵氏所蔵)(大正震災亡失)狩野元信筆大滝(秋元子爵旧蔵)芸阿弥筆瀑布山水(井上候爵所蔵)芸阿弥筆観瀑僧図(郷男爵旧蔵)
等瀑布の絵多き中に就きて世に知られたるなるものなり。芸阿弥の瀑布の図は画いて啓書記に与へたるものにて、學叟真芸五十歳の落款あり。周鏡景☆等の題詩あり。横川景三の跋あり。文明十年の作と明記されたるものあり。世に名物と称さる。
(『画題辞典』斎藤隆三)
東洋画題綜覧
瀑布は和名滝(たき)と呼ぶ、東洋の山水画の中で極めて主要なるもの、唯に瀑布そのものを画くもの、山水として図するもの花鳥を配するもの千差万別である、そのタキの語源に就て、『大言海』には
滝、たぎる意、河瀬の水の疾く奔り流るゝもの、急流の響あるもの、転じて垂水、即ち懸崖より流れ落つる水、又高きより直に落つるもの、懸泉、飛泉、瀑布
とある、滝を画ける名作左の通り。
伝王維筆 『瀑布図』(国宝) 京都智積院蔵
伝金岡筆 『那智滝図』 根津美術館蔵
芸阿弥筆 『滝山水図』 郷男爵家伝来
雪村筆 『滝山水図』 双軒庵旧蔵
伝呉道子筆 『山水双幅』(国宝) 京都高桐院蔵
円山応挙筆 『瀑布図』(同) 讃岐金刀比羅宮蔵
立原杏竹筆 『袋田滝』(重美) 山内保氏蔵
橋本雅邦筆 『霧降滝』 藤井某氏旧蔵
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)