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つき


画題

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解説

東洋画題綜覧

月は太陽に次いで人の生活の上に、芸術の上に交渉の深い天体の一つで、地球の一衛星である、その直径三四七三キロメール、容積は地球の五十分一で、地球との距離は十万里といはれている、東から出て西に入る、それは太陽と変りは無いが、月が地球の周囲をめぐる軌道は楕円形をなし、自からも回転しつゝ其の軌道を運行するので、その月の出も時間には差があるし、また月自体は光なく、太陽の光を受けてあの美しい光を発するやうに見えるのであるから、その運行に従つて或は満ち或は虧ける、そして地球の周囲を二十七日七時四十三分十秒を以て一周する、その間に新月から上弦、満月、下弦、そして再び元の新月にかへる、これを月の盈虚といふ、月が地球と共に同じ方向で太陽に面している場合には、地球からは月の姿は望めない、それが朔である、それから朔から三日目になると少しく外れて太陽に照された部分が弓のやうに見える、これが俗にいふ三日月であり、九十度の辺まで来て、上半部を見せる時が上弦、更に運行して円形に見える時、即ち満月が望、更に九十度旋つて下弦となり再び新月となる、即ち満月の時は月が地球から見て太陽と正反対の位置にあるわけである。

月は地球と隔つること凡そ十万里といふが、広い宇宙から見れば最も近い距離にあるので、その表面などは望遠鏡によつてよく知ることが出来る、今日までに撮影した月の写真を見ると、その表面には数限りない噴火山のやうなものが見え、その一番高いのが二万六千呎から七千呎に達すると称せられる、此の山や渓谷などが、満月の夜見ると、いろ/\の形に見えて、西洋では美人の横顔に見えるといひ、東洋ではや蟾蜍が居ると見てゐた、さうした事から月には沢山の異名や雅名がある。

太陰、玉兎、月輪、銀蟾、氷蟾、蟾兎、玉鑑、玉魄、玉盤、玉輪、桂輪、金鏡、氷輪、玉蟾、玄兎、霊輪、金精、金枢、嫦娥、素娥、姮娥、桂子、一鏡円、月光、兎光、清光、清虚、清輝、澎気、金波、掛鏡、似鏡、皓潔、皓々、素影、素華、蟾華、玉鏡懸、桂花開、玉盤転、金蝦蟆、氷輪輾、月華、月嬋、月色、月痕、宵徳、月明。

皆これが月の異名である、我が国でも月にはいろ/\の異名や雅名をつけている。

ささらえをとこ、月日をとこ、桂をとこ、月夜見男、月人男

それから、時と形とによる月の名には

有明月、明の月、朝月夜、残月、昼の月、夕月夜、宵月夜、半月弦月弓張月片割月、月の剣、月の舟、名月、十六夜、後の月

などそれである。

月は好箇の画材であるから、これを画いた作は枚挙に遑もないが、金剛寺の『日月山水屏風』や前田侯爵家の『日月屏風』は逸することの出来ぬもの、光琳には『月波』の傑作があり、守景の『納涼』も月の名画の中に数へられやう、山雪の屏風『水禽月波』の大作、探幽の『五月雨月』松花堂画月江月画賛も逸品である、此の外にも沢山ある。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)


一年三百六十五日を十二に分ちて、その一を月といふ、大と小とあり、大は、正、三、五、七、八、十、十二の七ケ月で三十一日、小は四、六、九、十一に二月である、そして四、六、九、十一の四ケ月は三十日、二月は二十八日で閏年は二十九日となり、各月それぞれに種々の異名があり、これが画題に用ひられることも屡々ある。

正月 むつき(書紀、万葉集、古今集)武都紀(万葉)睦月、昵月(下学集)月正(尚書舜典周処風土記)初春(和名類衆鈔)さみどり月(躬恒秘蔵抄)暮春月(俊頼朝臣莫伝抄)年初月(同)初空月(蔵玉集)霞初月(同)初春月(同)端月(玉燭宝典)孟春(礼記月令)履端(壒嚢抄左伝)陬(爾雅)孟陬(離騒経)監徳(史記)孟陽(元帝纂要)

二月 なかのはる(古今六帖)夾鐘(礼記月令)梅つさ月(躬恒秘蔵抄)雪消月、梅つ月(俊頼朝臣莫伝抄)梅見月(蔵玉集)小草生月(同)如(爾雅)橘如(同)如月(新撰六帖)仲春(和名類聚鈔)降入(史記)仲陽(元帝纂要)令月(同)令節(歳華紀麗)仲序(同)

三月 やよひ(日本書紀、古今詞書)いやおひ(新撰六帖)弥生(下学集)季春(令義解礼記月令)暮春(和名類聚鈔)姑洗(拾芥抄)さはなさ月(躬恒秘蔵抄)花津月、夢見月(莫伝抄)花見月、桜月、春惜月(蔵玉集)青章(史記)末春(元帝纂要)晩春(同)載陽(事物別名)華飾(同)末垂(同)蚕月(毛詩)其他略

四月 うつき(古事記、書紀)うのはな月(莫伝抄)このはとり月(秘蔵抄)夏初月(莫伝抄)えとり羽の月、花残月(蔵玉集)夏の初(古今六帖)首夏(和名類聚鈔)孟夏(楚辞淮南子其他)始夏(後漢書)仲呂(拾芥抄、礼記春秋其他)維夏(毛詩)麦秋(礼記)余(爾雅)余月(藻汐草)跰踵(史記)正陽(藻汐草其他)純陽(西京雑記)陰月(同)清和(藻汐草)乏月(元帝纂要)純乾(事物別名)

五月 さつき(書紀、万葉、古今)さくも月、授雲月、多草月(莫伝抄)賎男染月、月不見月、橘月、吹喜月(蔵玉集)梅月(下学集)仲夏(和名類聚鈔)蕤賓(拾芥抄)皐月(事物別名)厲皐(爾雅注)開明(史記)啓明(天文志)梅夏(歳華紀麗)角黍之秋(同)浴蘭月(同)長至鳴蜩、鳴鵙(事物別名)薫風(風土記、歳華紀麗)

六月 水無月(奥義抄)季夏(和名類聚抄)林鐘(年中行事秘抄其他)いすゝくれ月(秘蔵抄)涼暮月、松風月(莫伝抄)風待月(蔵玉集)鳴雷月、常夏月(同)晩夏(壒嚢抄)旦(爾雅)旦月(事物別名)長列(史記)長夏(素問)炎陽(歳華紀麗)三伏元秋(同)積陽末垂(事物別名)夏なか(貫之集)としなか(伊勢集)婆達羅鉢陀月(西域記)

七月 ふつき(書紀、八雲御抄)ふみつき(古今集其他)文月(後撰集奥義抄)ふみひろけ月(蔵玉集)文披月(同、藻汐草)はつ秋(古今六帖)めてあひ月(秘蔵抄)七夜月、秋初月(莫伝抄)女郎花月、七夕月(蔵玉集)親月(下学集)孟秋(年中行事秘抄)初秋(和名類聚鈔)新秋(韓文)夷則(拾芥抄)大晋(史記)相(爾雅)相月(事物別名)首秋(元帝纂要)上秋、肇秋、蘭秋(同)蘭月(提要録)涼月(藻汐草)流火(事物別名)享菽(同)

八月 はつき(日本書紀、八雲御抄)葉月(奥義抄、下学集其他)なかの秋(躬恒集)仲秋(和名類聚鈔其他)ささはなさ月(秘蔵抄)木染月、草津月(莫伝抄)秋風月、月見月、紅染月(蔵玉集)橘春(日本歳時記)雁来月、燕去月、秋半(毫品通考)南呂(拾芥抄)壮(爾雅)壮月(事物別名)長王(史記)大章(同)仲商、桂月(元帝纂要)素月(歳華紀麗)

九月 なかつき(日本書紀、万葉其他)いろとり月(秘蔵抄)菊開月、紅葉月(莫伝抄)小田刈月、寝覚月(蔵玉集)こずゑの秋(八雲御抄)祝月(日次記事)季秋(和名類衆鈔)無射(年中行事秘抄)玄(爾雅)玄月(壒嚢抄)天睢(史記)暮秋、末秋、暮商、季商、抄秋、授衣、菊月(元帝纂要)高秋(梁簡文帝三詩、歳華紀麗)勁秋(事物別名)(其他略)

十月 かみなつき(日本書紀、万葉其他)神無月(秘蔵抄、奥義抄其他)陽(詩小雅)陽月(壒嚢抄)極陽(爾雅法)かみなかり月(秘蔵抄)雷無月(義公御説、類聚名物考語意)神去月(莫伝抄)はしめの冬(躬恒集)初冬、冬のはじめ(古今六帖)鎮祭月(八雲御抄)時雨月、拾月、初霜月(蔵玉集)孟冬(和名類聚鈔)上冬(元帝纂要)開冬(同)応鐘(年中行事秘抄)良月(左伝)大章(史記)大月(通雅)始氷(藻汐草)小春(荊楚歳時記)小陽春(初学記)大素(博雅)吉月(後漢書)正陰月(西京雑記)

十一月 しもつき(日本書紀、万葉其他)十有一月(尚書尭典)なかの冬(曽丹集)雪待月、神帰月(莫伝抄)雪見月、神楽月(蔵玉集)子月(壒嚢抄)仲冬(和名類聚鈔)黄鐘(年中行事秘抄)暢月(下学集)辜(爾雅)辜月(日本歳時記)天泉(史記)天泉月(採奇)達月(玉燭宝典)短至(事物別名)周正(月令広義)広寒月(六帖)葭月(留青新集)三至(三体義宗)六呂(下学集)陽復(同)復月(日本歳時記)

十二月 しはす(日本書紀、万葉、古今)十有二月(日本書紀)師趨(奥義抄、下学集)四極(日本歳時記)四極月(同)極月(同)年のはて(貫之集)年のくれ(古今六帖)年よむ月(秘蔵抄)暮古月、親子月(莫伝抄)春待月、梅初月、三冬月(蔵玉集)弟月(年浪草)二之月(詩経)季冬(和名類聚抄)大呂(年中行事秘抄)臘月(下学集)嘉平(史記)清花(風俗通)涂(爾雅)除月(元帝纂要)天皓(史記)暮冬、抄冬、暮節、暮歳、窮稔、窮紀(元帝纂要)窮月(礼記月令)凋年(文選舞鶴賦、事物別名)小歳、冬索、末垂(事物別名)其他。  (古今要覧稿)

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)