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密教の覇者
 院政期以降、権門寺院は、王権護持のため次々と修法を創出した。尊像には、願主の願いを叶える修法本尊として新たな効能や性格が付与され、日夜活用された。その道に万能の力を発揮する諸尊は、はじめから存在していたのではなく、権力と宗教が結びつく過程で創られたのである。
 中世の密家世界を制した者は修法本尊ではなく、政治権力を握り宗教界を牛耳った者達である。願望を叶えるために創出された修法本尊は、権謀術数を企む人間の欲望に常に対峙していたことであろう。かつての本尊は、現在も人々の内面を汲み取る力を秘めている。
愛染明王像 一幅 絹本著色 105.0 × 50.6 鎌倉時代
羅刹天像 一幅 絹本著色 81.5 × 41.0 鎌倉時代
別尊雑記 観音部 聖観音・千手 一巻 紙本墨画 28.7 × 940.4 鎌倉時代
曼荼羅集  上・中・下 三冊 紙本著色 31.0 × 21.2 江戸時代
覚禅鈔 大威徳法 一巻 紙本著色 28.1 × 1070.6 鎌倉時代
北斗供法 一巻 紙本墨書 28.6 × 672.1 鎌倉時代
九曜秘暦 一冊 紙本著色 21.8 × 16.5 室町時代

修法の現場
 密教修法を遂行するには、これらを立ち上げる僧達をはじめ、行う場所、荘厳する道具、これらを支える仏教的世界観などが必要であった。修法の技術や内容を後世に伝えるため、或いは修法を継続して行うため、或いは深淵広大な世界観を理解するため、寺院には様々な記録が残された。
 記録のみで当時を再現することはできない。しかし、密教世界の一端を開示した細部の記録は、脚色なくかつての威勢を我々に伝える。

神泉苑請雨経法指図 一幅 紙本著色 81.2 × 57.5 室町時代
灌頂道具等指図 一冊 紙本著色 23.0 × 16.5 室町時代
10 後七日御修法請僧交名 一巻 紙本墨書 30.0 × 1956.2 平安時代
11 後七日御修法請僧交名 一幅 紙本墨書 29.6 × 42.5 室町時代
12 金剛峯寺建立修行縁起 一冊 紙本墨書 22.5 × 15.0 江戸時代
13 瑜祇塔図 一幅 紙本著色 46.8 × 31.5 南北朝時代

王法仏法相依の軌跡
 様々な密教修法が創出された院政期は、法皇と修法に秀でた僧の時代でもある。貴種の天皇を擁した法流は、他流に対する優越性を培い、周辺には優れた文化や修法が生み出された。王家に並行し、鎌倉時代の摂関家では菅原道真など、真言宗では祖師弘法大師空海に対する結びつきを強め、それぞれの存続を保持した。中世の人・仏習合は、夥しい種類の修法や聖教を生成したが、流行は瞬く間に過ぎ去った。
 王法と仏法の蜜月関係によって生み出された文化は、仏教という枠組みを越え、現在に「盛者必衰」の意味を伝える。

14 権僧正成賢書状 一幅 紙本墨書 27.1 × 38.5 鎌倉時代
15 深賢書状 一幅 紙本墨書 28.4 × 51.6 鎌倉時代
16 後高野北院等御記 一冊 紙本墨書 15.0 × 24.0 鎌倉時代
17 後深草天皇宸翰消息 一幅 紙本墨書 27.8 × 50.7 鎌倉時代
18 束帯天神像 一幅 絹本著色 84.9 × 36.7 鎌倉時代
19 広付法伝勘文 上・下 二冊 紙本墨書 21.5 × 15.7 室町時代
20 御遺告釈疑抄 中・末 二冊 紙本墨書 25.7 × 16.2 室町時代

 

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