夢浮橋
ゆめのうきはし
画題
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解説
東洋画題綜覧
源氏物語最後の巻である、薫の大将恋ひ慕ふ浮舟の行衛も知らずなつたので、物憂き日を送りながらも浮舟の弟を傍近く召寄せて使ひなどしてゐる、不図浮舟の行衛を聞得たので、恋ひ慕ふ節を細かく書いて送る。
尼君御文ひきときて見せ奉る、ありしながらの御手にて紙の香など例の世いかぬまでしみたり、ほのかにみて、例のものめでのさしすき人、いとありがたくをかしと思ふべし、更に聞えん方なくさま/゙\に罪重き御心をば僧都に思ひ許しきこえて、今はいかゞあさましかりし世のゆめがたりをだにと、いそがるゝ心の、われながらもどかしきになん、まして人めはいかにと、書きもやり給はず
法の師と尋ぬる道をしるべにておもはぬ山にふみまどふかな
この人はみや忘れ給ひぬらん、ここには行方なき御かたみに見るものにてなんなど、いとこまやかなり。
併し浮舟は心に覚えぬさまに使を返してしまう。
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)