末摘花
すえつむはな
画題
画像(Open)
解説
画題辞典
源氏物語の内なり、常陸の宮と申す古宮坐ます、その宮の失せ玉ひし後は、一方の姫君残り坐にせしを、源氏聞き知りて、めのとの少将の命婦に道案内をさせ之に赴くに、姫君色白く鼻のさき少し赤しとなり、されど様子よく坐にせしかば、この後も通ひ玉ひ、後には二条院東の第に置き玉ひしとなり。源氏歌に「なつかしき色ともなしに何にこそ 末摘む花を袖にふれけん」
近江石山寺に土佐光起画く所の絵巻一巻あり、国宝なり。
(『画題辞典』斎藤隆三)
東洋画題綜覧
『源氏物語』五十四帖の第六、光源氏十八歳から十九歳の正月までの事を記した、常陸の宮失せ給うたあとに姫一人残されたのを源氏が伝へ聞いて、めのとの少将の命婦に道しるべさせこれに通ふ、此の姫、色白く鼻のさき少し赤いが、愛嬌あり、後には二条院東の第に置いて通つたが、扨て女もあらうに此の女までといふ後悔は、次の一節にあらはれ、これが巻の名となつてゐる。
今やう色のえ免すまじく艶なうふるめきたる直衣の、表裏ひとしうこまやかなる、いとなほ/\しう、つま/\ぞ見えたる、あさましとおぼすに、この文をひろげながら端に手習ひすさぴ給ふを側目に見れば、
なつかしき色ともなしに何にこのすゑつむ花を袖にふれけん
色濃き花と見しかどもなど、書きけがし給ふ、花のとがめを猶あるやうあらんと、思ひ合する折々の月かげなどを、いとほしきものから、をかしう思ひなりぬ。
此の巻を画いたものに近江石山寺所蔵土佐光起筆がある。
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)