椎本
しいがもと
画題
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解説
東洋画題綜覧
『源氏物語』五十四帖の一、うばそくの宮が病に臥してから、秋となると漸く重りゆく、四季の念仏の為めに山へ入らうと、その旨姫達にも諮つてゐる処へ、薫大将が尋ねて来たのであとに残る姫達のことなど、それとなしに頼んで空しくなる、薫大将は、うばそくの宮が三十余年過した住居のあれたのを見て深き感慨にしづむ、巻の名は
世の中に頼むよるべも侍らぬ身にて、一所の御かげに隠れて、三十余年を過し侍りにければ、今はまして野山にまじり侍らんもいかなる木の本をかはたのむべく侍らんと申して、いとゞ人わろげなり、おはしましゝ方あけさせ給へれば、塵いたう積りて、仏のみぞ、花のかざり衰へず、行ひ給ひけりと見ゆる、御床など取りやりて、かき払ひたり、本意をも遂げばと、契り聞えしこと思ひ出でて
立ちよらんかげとたのみし椎が本むなしき床になりにけるかな
から来てゐる。
源氏絵として屡々画かれてゐることいふまでもない。
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)