鴨
かも
画題
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解説
東洋画題綜覧
鴨は雁鴨科の水禽で、秋の末に北海より渡来し冬を日本に過して早春また北地に帰る、日本に見らるゝものは約三十種に上り、その中最もよく知られてゐるのは真鴨で、俗に青首と称し形も大形であり色彩も美しく殊に雄の頭部から頸部にかけても金属的光沢を帯びた緑暗色の羽毛が特長である、尾羽十八枚乃至二十枚、嘴は黄緑色を呈し、雌は褐色である、巴鴨は鴨の中では美しい方で、巴といふ名は顔に黒と黄と白と緑色が相交錯して巴形になつてゐるからで、よく絵に画かれる、小鴨は名の通り小形で翼長僅六寸内外、特長は雄は眼から上頸に達する幅広い紫緑色の帯があり、その前後は褐色で、その間に白色帯がある、葭鴨は雄が頭部栗色、顔は緑色を呈し白い帯があり、三列の風切羽が鎌のやうに曲り一種の飾羽になつてゐる、雌は失張り褐色で黒い細い斑紋がある、支那では羅文鴨といふ、尾長鴨は顔は褐色、胸から腹へかけて白色、翼は緑や白や黒や美しい色彩が交錯し尾羽の中二枚が特に長く伸びてゐる、尾長鴨の名はこれから来てゐる、支那では尖尾鴨といふ、雌は大部分褐色だが腹は白い、軽鴨は真鴨と同じ位の大さで雌雄同色、色彩は頭が黒く肩から頬へかけて帯白色、嘴の基部から限へかけて黒い線があり嘴は大体黒色であるが先端の黄色を帯びてゐるのが特徴であり、此の種類丈けは夏でも見られるので、夏鴨と呼ばれてゐる、この外十数種あり、鴛鴦も鴨の一種である。
鴨の画かれた名作二三を列挙する。
徽宗皇帝筆 『鴨』 川崎男爵家旧蔵
尾形光琳筆 『飛鴨図』 大沢百花潭旧蔵
伝狩野山楽筆 醍醐三宝院襖絵
狩野永納筆 『群鴨図』 京都花園春光院蔵
駒井源埼筆 『群鴨襖絵』 但馬大乗寺蔵
渡辺崋山筆 『秋塘双鴨』 長尾欽弥氏蔵
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)