落柿舎
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らくししゃ
画題
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解説
東洋画題綜覧
落柿舎は京都嵯峨にある。俳人向井去来隠棲の旧跡で、その人格と作句の秀れた点から此の小庵も有名なものとなつた、その落柿舎の名は菊亭内府の賜ふ処、去来自らのその記を書いてゐる。
落柿舎の記 去来
嵯峨にひとつのふる家侍る、そのほとりに柿の木四十本あり、五とせ六とせ経ぬれども、このみも持来らず、代かゆるわざも聞かねば、もし雨風に落されなば、王祥が志にもはぢよ、若鳶烏にとられなば、天の帝のめぐみにももれなむと、屋敷もる人を常はいどみのゝしりけり、ことし八月の末、かしこにいたりぬ、折ふしみやこより、商人の来り、立木にかい求めむと、一貫文さし出し悦びかへりぬ、予は猶そこにとゞまりけるに、ころ/\と屋根はしる音、ひし/\と庭につぶるゝ声、よすがら落もやまず、明れば商人の見舞来たり、梢つく/\と打詠め、我むかふ髪の頃より白髪生るまで此事を業とし侍れど、かくばかり落ぬる柿を見ず、きのふの価、かへしくれたびてむやと佗、いと便なければゆるしやりぬ、此者のかへりに、友とちの許へ消息送るとて、みづから落柿舎の去来と書はじめけり。
柿ぬしや木ずゑは近きあらし山 (風俗文選)
野田九浦筆 『落柿舎の朝霜』 第一回如水会出品
八田高容筆 『落柿舎の秋』 第六回帝展出品
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)