麻利支天
まりしてん
画題
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解説
東洋画題綜覧
摩利支天は印度の神名、こゝに陽炎と訳す、これその相形の捕捉すべからざるが故である、帝釈天の眷族で、日天に附属し四天下を巡行すといふ、『摩利支天経』に曰く
有天名摩利支、無人能見常行日前。
と又曰く
若有知摩利支名常憶念者、彼人亦不可見、亦不可知、亦不可捉、亦不可害、亦不可欺誑、亦不為人之所責罰不為怨家能得其便云々 (仏教辞林)
と
摩利支天は仏画にも画かれてゐるが割合に少く僅かに猪に騎してゐるものを見る位である、これは見るべからず知るべからず云々とある『摩利支天経』に拠る処であらう、その作としては京都聖護院に鎌倉時代の名作あつて国宝に指定され又、近衛家には狩野探幽の作があるが、三幅対で左右を山水とし、中に猪を描き、光背の中に鳥を現はした、これ亦、前述の意を寓したものであらう。
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)