蝉
せみ
画題
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解説
東洋画題綜覧
蝉は昆虫類の中で最も声の高いので知られてゐる、動物学上では有吻目同翅亜目中の一科をなし蝉科といふ、形大きく触角は七節から成り二箇の複眼のほかに頭頂に三箇の単眼を具へ前翅は後翅より大きく前翅の腿部は肥え下面に鋸歯のあるのが特徴であり雄は腹部に発音器を具へてゐる、これは腹部の前方に薄膜を張り筋肉で震動せしめる外、共鳴室があつて構造は極めて巧みに出来てゐる、その種類としては、蚱蝉〈うまぜみ〉、蟪蛄〈つく/゙\はふし〉、寒蝉、茅蜩〈ひぐらし〉、唖蝉、冠蝉、あまぜみなどがある、その生活は地上にあつては数週間に過ぎぬが、地中生活は極めて永く、日本産の蝉は普通四五年とされてゐるが、米国には十七年蝉といつて、此の長期土中に潜んで居るのがある。
午睡不知雨入楼、忽驚懸瀑濺檐頭、須臾雲散簾櫳敝、斜日鳴蝉一院秋 僧慈周
蝉は形が面白いので、夏の花鳥画としては極めて面白い、従つて作例も多いが、これを主題とした大作などはない。
馬和之筆 『風柳蝉蝶図』 名画大観所載
渡辺崋山筆 『花卉画賛帖』 鈴木仁十郎氏蔵
速水御舟筆 『晩蝉図』 個人展出品
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)