衣通郎姫
そとおりのいらつめ
画題
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解説
前賢故実
允恭天皇が寵愛する姫。皇后忍阪大中姫の妹。詞藻や文才に富んで歌詞が絶妙である。容色が艶麗で、玉のような膚が衣を通して輝いていた。はじめは、帝は皇后に衣通郎姫を奉らせることを強いた。衣通郎姫は皇后を恐れて、帝の召し寄せを七回も辞退した。帝は中臣烏賊津使主を遣わして、衣通郎姫を召し寄せようとしたが、またも固辞された。使主は衣通郎姫の家の庭の中に伏して七日間、食物を食べず、涙ながら懇請し続けた。衣通郎姫はやむを得ず宮中に入った。帝は姫を寵愛し、藤原に宮殿を造営して住まわせた。後に河内茅淳の宮へ移り住み、天皇は屡々衣通郎姫の許に通い続けていた。
ある日、天皇は藤原宮へ行き、密かに衣通郎姫の様子を伺った。そこで物思いに耽る衣通郎姫が歌を詠んでいる姿を目にした。/わがせこが くべきよひなり ささがねの くものおこなひ こよひしるしも
姫の歌を聴いて、天皇は感動して歌を詠んだ。
ささらがた にしきのひもを ときさけて あまたはねずに ただひとよのみ
(『前賢故実』)