牡丹

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ぼたん


画題

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解説

画題辞典

牡丹花の濃艶華麗なるは、夙に支那に於て花中王と尊ばれ、又花中の富貴なるものと稱せられて愛せられ、古来画かるる所甚だ多し。伝錢舜擧筆對幅(京都知恩院所蔵国宝)錢舜擧筆對幅(京都高桐院所蔵国宝)錢舜擧筆小品(浅野侯爵所蔵)伝錢舜擧筆(井上侯爵所蔵)伝趙昌筆(山城龍光院所蔵)郭凞筆(近衛侯爵所蔵)王若水筆(井上侯爵所蔵)の如きに古画の名高きものなり、本朝近世の作家に於ては狩野擢幽、緒方光琳、その他の作品あり、近江円満院所蔵孔雀牡丹図亦国宝なり。襖帖付にては、伝狩野山楽筆組四枚(京都大覺寺所蔵)

(『画題辞典』斎藤隆三)

東洋画題綜覧

牡丹は毛莨科に属する落葉灌木で、支那を原産地とし古くから鑑賞せられた名花である、茎の高さは五六尺に達し、春の初め木質の処から紅色の芽を出し、成長して新しい枝となり花は此の枝に開く、花期は処によつて遅速はあるが大抵四月中旬から五月上旬までである、花の輪は五六寸から七八寸に達し、花弁は単独のものでも十余枚あり、倒卵形であるが、その尖端には不規則の刻み込みがある、重弁になると、数十片の多きに達するものもある、花の中には多数の雄蕊と数個の雌蕊があり、三個乃至五個の子房があり、その柱頭は短かくして外部に向つて反つてゐる、萼は五片で、これは花弁が散り落ちてもあとに残り、子房は成熟すると割れ、黒色の種子が現はれて来る、葉は羽状複葉で、葉柄が長く葉の周縁には二三の裂け目があり、緑色であるが時に紅を含んだものもある、花には大輪、中輪小輪いろ/\あり、花弁も単弁、八重、千重と種類に依つて変つて居り、或は円く大きく、或は細く長く、獅子咲、二段咲、抱咲、重咲があり、色彩も白、紅、紫、底紅、濃紅、濃紫、薄色など多数ある。

支那では原産地丈けにその栽培も古く行はれたと見え、『事物起源』に依れば、隋の煬帝の世に始めて牡丹の花を伝へ、唐の開元年中には宮中及び民間に於て競つてこれを鑑賞したと見え、牡丹を以て花中の王とし、芍薬を以て花相となすといふことも古書に見える、当時変種もあつたと見え、欧陽永叔の『花品録』には、既に姚黄、牛家黄、潜渓緋、献来紅、鶴翎紅、鹿胎花、王版白などの種類を挙げ、更に朱砂紅、倒暈檀心、蓮花蕊、九蕊真球などの色や形の名称も遺つてゐる。

寺島良安の『和漢三才図会』によると、日本に於て盛に栽培されるやうになつたのは、聖武天皇の御宇からで今もなほ奈良では盛にこれを作り名花を出すことも多いと記してゐる。奈良朝以後牡丹の栽培が如何なる状態にあつたか詳でないが、江戸時代に至つてその流行漸く盛に、寛永年中にはその品種も少からず現はれたやうである。  (芸術資料)

牡丹には名画が極めて多数ある、特に有名なもののみを挙げる。

筆者不明   (国宝)『牡丹双幅』  京都高桐院蔵

伝銭舜挙筆  (国宝)        同 知恩院蔵

伝山楽筆               同 嵯峨大覚寺蔵

海北友松筆              京都妙心寺蔵

田能村竹田筆  (亦復一楽帖の中)  松本双軒庵旧蔵

椿椿山筆    『牡丹小禽』     小倉常吉氏蔵

趙之謙筆               河井筌廬氏蔵

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)