遊女道中
ゆうじょどうちゅう
画題
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解説
画題辞典
江戸ならば新吉原仲の町、京都ならば島原揚屋町、廓中の大道を遊女が盛装し容儀を繕うて行歩することを道中という。全盛の太夫職などにありては、紋付の箱提灯を先きに差し掛け傘に被われ、禿、振新、若衆、十余人の多勢を随いて往く、盛儀女人国の王者の実を示すものである。その時踏む足取りを八文字という。江戸時代華街の盛観にて浮世絵の好題目である。
東京帝室博物館に磯田湖龍斎歌川豊春の画あり、
版画は挙ぐに堪えぬほどの多数あり。
(『画題辞典』斎藤隆三)
東洋画題綜覧
江戸では新吉原仲の町、京都では島原で、桜時に太夫と呼ばるゝ遊女容儀を整へて廓内を道中する、髷、裲襠、塗下駄、それぞれに型があり、歩き方に八文字がある、『嬉遊笑覧』に曰く、
内八文字といふあゆみやうも京師の風あり、(諸艶大鑑)先一番に、都の三夕各別世界の道中なり、内八文字にかいどり前云々、(東海道名所記)島原の条に、只今あけられて、かふろ、やり手におくられ、長きもすそをかいとり、八文字に踏でゆくうしろかげ云々とあるも内八文字なるべし、或人云、遊女も延享寛延の頃までは、紗綾ちりめん羽二重を着て中の町へ出る。その道中の衣服毎日とり替着て同じ衣類は着ざりし。
と、華街の年中行事として徳川時代には豪華なみものとなつて居た、従つて浮世絵にはこれが画かれるもの極めて多い。
川又常正筆 『遊君道中』 中村金太郎氏蔵
喜多川歌麿筆 『同』 平尾賛平氏蔵
鳥文斎栄之筆 『桜花傾城』 山中定次郎氏旧蔵
歌川豊春筆 『遊女道中』 同
菊川英山筆 『花魁道中』 ビゲロー氏遺愛品
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)