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さる


画題

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解説

画題辞典

「えんこう」(猿猴)を見よ。

(『画題辞典』斎藤隆三)

東洋画題綜覧

猿は脊椎動物哺乳類霊長目に族し、猿科、類人猿科、指猿科其他の科に分れてゐる、普通猿と呼ばれてゐるのは日本唯一のもので、類似のものに台湾猿がある。東洋画に多く画かれる猿猴は類人猿の手長猿である。

日本猿は頭胴及び四肢は一様の暗褐色で、黄色の斑があり体の上部の毛は基部半は灰色、先半ははバフ色を呈し、尾甚だ短く灰色で先端黒褐色、顔は裸出して赤く、体の後端にも亦赤い臂肬があり手足は黒色で五指あり、眼は左右相接し、鼻は扁平で下方に開き、顎は突出し耳は裸出して毛皮外に出てゐる、食物を一時に蓄へ置く為め頬囊がある、我国特有の種にして北は青森県から本州全部四国及び九州に達し南は屋久島に至る。毎年十二月中下旬交尾し九ケ月にして一仔を産する、山林に棲息して果実を好む。

手長猿は印度馬来地方の山地森林帯に産する類人猿で体色灰黒色で四肢は色淡く裸出する黒色の顔の周囲には普通白毛を生じてゐる常に群を為して樹上に生活し、上肢即ち手と呼ばるゝものは極めて長く、直立してその先が優に地に届く、猿猴の文字が使はれてゐる。猿を描いたもの極めて多い、名作を挙げる。

伝毛松筆                京都曼殊院蔵

牧谿筆     『岸樹遊猿図』     酒井伯爵家蔵

顔輝筆     『古木猿猴図』     井上子爵家旧蔵

雪舟筆     『群猿屏風』      ボストン美術館蔵

伝島羽覚猷筆  『鳥獣戯画巻』     山城高山寺蔵

牧谿筆     『観音猿鶴図』     京都大徳寺蔵

森狙仙筆    『山中群猿図』     岸上家旧蔵

長沢芦雪筆   『岩上猿猴図』     藤田山王荘家旧蔵

相阿弥筆    『老松猿猴図』     徳川伯爵家旧蔵

竹内栖鳳筆   『飼はれたる猿と兎』  第二回文展出品

橋本関雪筆   『玄猿』        第十四回帝展出品

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)