巻5.05 都への凱旋

眷属たちの殲滅も果たした頼光一行は、女房たちを引き連れ、鬼が城をあとにした。行きに頼光たちが直面した数々の難所も、三神の力によって平らかになっており、女房たちの足でも楽々と乗り越えることができた。

頼光一行が酒呑童子を倒し、三十六人の女房たちを連れて都へ向かっているという話は、いつのまにか京中の人々の間に広まっていた。討伐を成し遂げた頼光たちを一目見るため、あるいは、攫われた姫君を持つ公家たちは娘を出迎えるため、都の内から大江山のふもとにいたるまで、貴賤上下の隔てなく、多くの人々が詰めかけ、一行の帰りを待ち構えていた。

巳の刻になり、頼光の計らいによって、先に女房たちが都へと足を踏み入れ、父母との再会を喜んだ。しかし、堀江中書殿夫妻のもとには、殺された姫君の形見が届けられることとなった。

その後、未の刻になると、ついに酒呑童子の首が都へと運び込まれ、その次に眷属の鬼たちの首、更に生け捕りの石熊・金熊が続き、あまりの恐ろしさに見物の人々も度肝を抜かれて逃げ出すような有様であった。最後、華やかな装いをして馬に乗った頼光一行が、数万の軍勢に囲まれながら、都へと入っていった。

無事帰洛を果たしたのち、頼光と保昌は直ちに参内して討伐の仔細を帝へ奏聞した。討伐の成功が三神の支えによるものと申告された帝は感心して、神々に対し、様々なかたちで手厚く返礼申し上げた。

頼光一行もそれぞれ所領を賜り、頼光と保昌は昇殿(宮中の清涼殿にある殿上の間に上がること)を許された。頼光らは神々に所領や神馬を寄進し、今後の武運長久を祈り、その後も弓矢を子孫につたえ、一族は繁栄を極めることとなった。

こうして平和は戻り、世の中もいよいよ豊かになっていった。

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    頼光一行の凱旋場面。