謡曲/能では「祇王」として謡曲、三番目物、現在能。宝生・金剛・喜多流現行曲とあり、作者は未詳。「妓王」や「二人祇王」とも呼ばれる。『自家伝抄』には「仏義王」とある。内容はまず平清盛に仕える瀬尾太郎が登場する。清盛は白拍子の祇王を寵愛しているが、今日加賀国の白拍子仏にもお目通りが叶ったことを語る。瀬尾に呼ばれて祇王・仏が共に出仕してくる。清盛の前で二人はそろって舞を舞う。清盛は仏に心を移し仏にのみ舞を所望するが仏は祇王を立て従うまいとする、というものになっている。
近松門左衛門の浄瑠璃「仏御前扇軍」では第三 北山の茸狩、西八条清盛邸にて登場する。本流の平家物語と同じく祇王は白拍子として清盛の寵愛を受けているが、この物語の中心といえる仏御前が清盛に追い返されようとしたときに執成したために寵愛を奪われ追い出されることになる。そして仏御前の病の慰めに祇王ら親子三人が召されたが、凋落の原因である仏御前の慰めに呼ばれてことに耐えられず、舞の途中に髪を切って退出し仏門に入る。
祇王、祇女ともに能や浄瑠璃「仏御前扇軍」では平家物語の流れと変わらず、一時は権勢を誇っていたが優しくも仏御前を清盛の目の前に出せるよう執成したがために凋落するということが受け継がれている。
川柳では、自身の優しさによって寵愛を奪われ、凋落した祇王祇女を揶揄したようなものが多くあった。
・祇王祇女田舎娘におつべされ
・仏在世祇王と祇女は尼になり
・加賀絹の湯文字に祇王祇女おされ
・押売りの芸子に祇王祇女おされ
・祇王祇女世をあぢきなく鍋ゆづけ
・祇王祇女転び芸者の元祖なり
・おぬし若したれはせぬかと祇王祇女
・平清を出る佐賀丁の祇王祇女
・祇王祇女味噌とうしほの間に出し
・味噌とうしほの間に出る祇王祇女
・祇女が母遺手のやうな口をきき
・引籠り楽の身と成ル祇王祇女
【参考文献】
・日招きの清盛 『歌舞伎細見』P.72-73
・祇王 『古典文学大辞典』 P.102
・近松門左衛門 『近松全集 第十四巻』浄瑠璃「仏御前扇軍」 P.275-399
・『新編川柳大辞典』 P.195 P.200
・『雜俳語辞典』P.279
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