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平家物語
・作者:未詳
・時代:十三世紀前半(推定)
・形式:戦記文学
・巻数:12巻
『源平盛衰記』四十八巻は、数ある異本の一つ。『保元物語』『平治物語』『承久記』とともに「四部合戦状」といわれる(『蔗軒日録』など)。治承四年(1180)―元暦元年(一1184)に展開された源平合戦の描写を軸に、その前後の平家一門の興隆と滅亡とを、仏教的な無常観を背景に記している。書名のゆえんもここにある。異本が数多く派生したため、相互に本文転化の過程を追い系統づけられないほど、混淆を示している。したがって、外見上の特徴を把えて大きく分類する方法で整理されている。もと三巻といわれ、それが六巻、十二巻、四十八巻などと倍増されてきたとされるが、原本の形態を具体的に示すことは不可能に近い。作者として伝えられている人々や成立年代についての諸説が、必ずしも広範囲の賛同を得ていないのも、この本文の混淆に一因があるといえよう。
「海道下り」(巻十の六)は寿永三年(1184)二月に一の谷の合戦に敗れた平重衡が、梶原景時に護送されて鎌倉へ向かった時の事を記したもの。「海道下り」は重衡の関東下向の経緯が記され、道行文は四宮河原(京都市山科区)から始まる。
歌枕(名所)として登場する地名
滋賀県
四宮河原(蝉丸伝承、京都市山科)、相阪山(逢坂山、滋賀県大津)、勢多の唐橋(瀬田の唐橋、滋賀県大津)、野路の里(滋賀県草津)、志賀のうら(琵琶湖に面する湖岸の一帯)、鏡山(滋賀県蒲生)、比良の高根(滋賀県大津)
岐阜県
不破の関(岐阜県不破)
愛知県
鳴海の塩潟(愛知県名古屋)、八橋(愛知県知立)
静岡県
浜名の橋(静岡県浜松)、池田の宿(静岡県磐田)、さやの中山(小夜の中山、静岡県掛川)、宇都の山(静岡県)、てごし(手越、静岡県静岡市)、甲斐のしらね(静岡県)、清見が関(静岡県静岡市)、富士のすそ野、まりこ河(鞠子河=酒匂川)
神奈川県
足柄の山(神奈川県)、こゆるぎの森(小余綾、神奈川県中部)、小磯(神奈川県中部)、大磯(神奈川県中部)、やつまと(八松、藤沢市)、とがみが原(砥上、藤沢市)、御輿が崎(鎌倉市)、鎌倉
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参考・おすすめ文献・サイト
山本光正『東海道の創造力』(臨川書店・2008)
益田宗「平家物語」『国史大辞典』(「 JapanKnowledge」, https://japanknowledge.com )
『平家物語』巻十「海道下り」