46. 庄野 白雨(東海道五十三次:歌川広重)

本シリーズの白眉の一枚

 現在の三重県鈴鹿市。本シリーズの白眉の一枚。『東海道五拾三次之内』の中で、最も有名な一枚。「白雨」とは夕立のこと。手前に置かれた急勾配の坂を必死に駆け登る駕籠かきと、転がり落ちるように下る旅人と農夫が描かれる。この版の摺りもとても良く、坂と直角に交差して降り注ぐ雨脚の描写、どす黒い雨雲を思わせる空のぼかし、雨の飛沫に煙る竹林の濃淡のシルエット、全てが激しい夕立の場面を見事に演出している。旅人の番傘に版元を示す「竹のうち」や「五十三次」とデザインされているのも面白い。この「庄野」は「蒲原」と並ぶ傑作とされる。「蒲原」が深々と降る雪をテーマにしたのに対して「庄野」では激しい夕立が描かれる。画中の人の動きもあり、静と動の対比がある。季節にも冬と夏の対比がある。強風に揺れる遠景の竹薮を、輪郭線の無い二重のシルエットにして奥行きを出し、降る雨の角度を変えるなど、技法的にも新たな試みをし、成功しています。

〈参考サイト〉

東京富士美術館「東海道五拾三次之内 庄野 白雨 | 歌川広重 | 収蔵品詳細」(https://www.fujibi.or.jp/collection/artwork/04366/

文化遺産オンライン「東海道五拾三次之内 46 庄野《白雨》」(https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/238226

アダチ版画研究所「歌川広重「東海道五拾三次 庄野 白雨」」(https://store.adachi-hanga.com/products/uk_hiroshige058?srsltid=AfmBOorop8YDztec9W5XTLJA49EytxSmGXcXxHVCuQyoho7849EEsz-A

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