40. 池鯉鮒 首夏馬市(東海道五十三次:歌川広重)

初夏の爽やかな風景

 現在の愛知県知立市。池鯉鮒は珍しい地名。鯉と鮒が沢山いた池があったといわれている。首夏、すなわち夏の初めの馬市の様子を描いている。ここでは毎年4月の末から5月の頭にかけて馬市が開かれていた。野原に立つ杭に多くの馬がつながれており、今まさに馬を連れてきた者の姿も見える。中央の一本松の下では馬喰と呼ばれる馬の仲買人による取引が行われており、そのため、この松は談合松と呼ばれた。この松の向こうになだらかな丘が描かれている。後摺りの版では消されてしまったこの丘が、何を描いたものなのかは謎とされる。様々なポーズをした馬の姿、風になびく草原の描写は動きに満ち、観る者を飽きさせない。この時期には遊女や役者まで集まってきて賑わった。初夏の爽やかな風景。

〈参考サイト〉

文化遺産オンライン「東海道五拾三次之内 40 地鯉鮒《首夏馬市》」(https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/246730

知足美術館「池鯉鮒 首夏馬市|東海道五十三次」(https://chisoku.jp/tokaido/39_chiryu/

東京富士美術館「東海道五拾三次之内 池鯉鮒 首夏馬市 | 歌川広重 | 収蔵品詳細」(https://www.fujibi.or.jp/collection/artwork/04360/

関連記事

arrow_upward