36. 御油 旅人留女(東海道五十三次:歌川広重)

強引な客引き

 現在の愛知県豊川市。御油の宿では日暮れになると「留女」と呼ばれた女たちの旅籠への客引きが盛んで、画中のような光景も大げさではなかった。『東海道中膝栗毛』には「両がはより出くる留女、いずれもめんをかぶりたるごとくぬりたてるが...」とあるが、その情景そのままの図といえる。手前の男は風呂敷を引っ張られ苦しむ顔がいかにも滑稽で、後ろの男も袖を引っ張られ困惑している様子が窺える。画面右の旅籠の中の様子も面白く、留女に観念したのか、草鞋を脱ぐ旅客に足洗い用の盥を差し出す老女も見える。御油は次の宿場である赤阪と、東海道中で最も宿場間の距離が近く、およそ1.7kmしか離れていないため、宿屋の客引が非常に強引であった。旅舎の軒に懸かる木札には、絵師名やシリーズ名、版元名とともに、彫工・摺工の名が記されている。

〈参考サイト〉

知足美術館「御油 旅人留女|東海道五十三次」(https://chisoku.jp/tokaido/35_goyu/

東京富士美術館「東海道五拾三次之内 御油 旅人留女 | 歌川広重 | 収蔵品詳細」(https://www.fujibi.or.jp/collection/artwork/04356/

アダチ版画研究所「歌川広重「東海道五拾三次 御油 旅人留女」」(https://store.adachi-hanga.com/products/uk_hiroshige048?srsltid=AfmBOorh4GOla8yvGjjtWMHzy9tnf75CdssVYyVwvt12gaCEJGXLOsOF

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