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作者:
歌川豊国(三代)、 歌川広重(二代)、 歌川芳虎、歌川豊国(四代)、歌川国輝(二代)、 豊原国周、 歌川芳宗、 月岡芳年、 歌川芳艶、艶長、歌川芳盛、五雲亭貞秀、歌川芳形、落合芳幾、河鍋暁斎、歌川国福
製作年:文久3年(1863)
枚数:164点
十四代将軍徳川家茂(1846-66)は公武合体のために文久3(1863)年2月13日江戸を出発し、3月4日に京都に到着、7日に孝明天皇(1831-66)に拝謁。大坂、紀州などへも足を伸ばした後、江戸へは6月16日に戻った。将軍の上洛は三代将軍家光以来の229年振りの大事件で、この長い旅は浮世絵の題材となった。
当時の出版統制下では、将軍の旅を直接的に表現できないはずだが、大名行列が描き込まれた街道風景を描いた大判(タテ35㎝、ヨコ24㎝くらい)や大判三枚続(タテ35㎝、ヨコ72㎝くらい)の浮世絵が数多く出版された。これらの浮世絵の中で大判に描かれたものは、「御上洛東海道」と呼ばれている。
「御上洛東海道」の作品には、「東海道」「東海道名所之内」などのいわばシリーズ名に地名を加えた題名が付けられている。「東海道名所風景」の題名のある目録(国立国会図書館ほか所蔵)には、15人の浮世絵師の名と計155点の名称が記されている。しかし、美術館・博物館などでの収蔵がほとんど確認されない作品もあって全容は掴みづらいが、実際には16人の浮世絵師によって複数の版元から出版された164点(管見の限り。目録などは含まず。)が一連の作品と思われる。文久3年4月の検閲印がある作品が大部分だが、その出版事情には謎が残る。
浮世絵シリーズで160点強という数は、初代広重の「江戸名所百景」(初代広重分で118点)や三代歌川豊国による通称「役者見立東海道」(130点強)を超える大シリーズ。通常の東海道五十三次のシリーズが55点、紙の大きさによっては56点で完結するのに比べて、3倍近くの点数となっている。
目録と照合しながら見ると、日本橋を出発して京都にたどり着くまで、宿駅以外にも宿駅の間にある間宿(あいのしゅく)と呼ばれる休憩のための宿駅や、ほかの名所も描かれていることがわかる。さらに、京都到着後も将軍家茂の行動をなぞるかのように、京都の名所や紀州(和歌山)や兵庫などを取り上げた作品が続く。〈参考サイト〉
神奈川県立歴史博物館「御上洛東海道」(https://ch.kanagawa-museum.jp/monthly_choice/2023_05)
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