32. 舞坂 今切真景(東海道五十三次:歌川広重)

今切の渡し

 現在の静岡県浜松市。古来、浜名湖は遠州灘とは砂州で隔てられた湖だったが、室町時代の大地震により湖と海を隔てていた砂州が決壊し、海につながる汽水湖となった。その決壊した場所を「今切れた」との意味で「今切」と呼ぶようになり、「今切の渡し」と呼ばれた渡し船が行き交うようになった。手前の並んだ杭は波除杭で遠州灘の荒波から渡し船を守るために幕府が築いたもの。この位置からも遠く富士を臨むことができる。今までの徒歩での陸路の旅とは異なり、束の間の憩いのひとときでもあったようである。冬の舞坂の港の図であるが、水面に突き出た山、手前には大きな帆、更に手前の沢山の杭が遠近をよく表わしている。遠景には冬の白い富士山、青い海が爽やかに描かれている。広重の風景画で天のぼかしが無い珍しい絵。

〈参考サイト〉

知足美術館「舞坂 今切真景|東海道五十三次」(https://chisoku.jp/tokaido/30_maisaka/

アダチ版画研究所「歌川広重「東海道五拾三次 舞坂 今切真景」」(https://store.adachi-hanga.com/products/uk_hiroshige043?srsltid=AfmBOor1MIEKfKkRW_C_3Y_egzNIV9fYmBfHvQWuTf2p5ck1v3GlDwaV

東京富士美術館「東海道五拾三次之内 舞坂 今切真景 | 歌川広重 | 収蔵品詳細」(https://www.fujibi.or.jp/collection/artwork/04351/

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