16. 蒲原 夜の雪(東海道五十三次:歌川広重)

深々と雪が降る寒村の夜の情景

現在の静岡県静岡市清水区。深々と降りしきる雪の中、夜道を3人の人物が慎重に足を運んでいる。彼らが被る笠や蓑にもうっすら雪が積もり始めている。人物以外を白と黒で描き、静寂に包まれる雪の夜の心細さを表現するとともに、黄と青に着色した人物を配置して全体に効果的な対比を創出している。すれ違った2人がお互いに顔を合わせず、背を向けて遠ざかってゆくようすは、ものさびしい雰囲気を高めている。舞台となった蒲原付近は元々雪深い地域ではないが、揃物のバリエーションの一つとして雪景の設定で描かれたものと考えられる。この版図には擂りの違いによる異版がいくつかあることで知られている。この版は、夜の空の下から上にむけて明るくなっていく「地ぼかし」という摺り方の版で普及版とされるもの。一方、夜の空が上から下に向けて明るくなっていく「天ぼかし」の版が初刷りと考えられており、夜のイメージを強めるために「地ぼかし」に変更されたとの見方もある。

〈参考サイト〉

東京富士美術館「東海道五拾三次之内 蒲原 夜之雪 | 歌川広重 | 収蔵品詳細」(https://www.fujibi.or.jp/collection/artwork/04336/

文化遺産オンライン「東海道五拾三次之内 16 蒲原《夜之雪》」(https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/238196

町田市立国際版画美術館「『東海道五拾三次』蒲原 夜之雪 | 名品紹介 | コレクション」(https://hanga-museum.jp/collectionimage/list003

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