10. 小田原 酒匂川(東海道五十三次:歌川広重)

キュービスムの抽象絵画のような箱根山系

 現在の神奈川県小田原市。遠景の様々な色彩と形で構成された山の表現が斬新に映る。山のふもとには小さく小田原城とその城下の町並みが描かれている。手前を横切る酒匂川は幕府の政策により架橋や渡船が禁止され、川越し人足による徒渡しによって渡る方法しかなかった。ここではふんどし姿となった人足の肩車を使って渡る者や、複数の人足が担ぐ輦台(川を渡すための台)で渡る者など、様々な徒渡しの様子が描かれている。画面遠景に、様々な色彩と形で描かれた山々はまるでキュービスムの抽象絵画のような響きがある。その斬新さに目を奪われ、山のふもとに描かれた小田原城を見落としてしまいがちだ。その小田原城の手前に広がる宿場が小田原宿である。箱根山系は逆光を受け、色彩や線などで険しさが表現されています。後に改版された異版では、この山々の色彩の面白さは失われてしまっている。

〈参考サイト〉

東京富士美術館「東海道五拾三次之内 小田原 酒匂川 | 歌川広重 | 収蔵品詳細」(https://www.fujibi.or.jp/collection/artwork/04330/

文化遺産オンライン「東海道五拾三次之内 10 小田原《酒匂川》」(https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/246700

知足美術館「小田原 酒匂川|東海道五十三次」(https://chisoku.jp/tokaido/09_odawara/

関連記事

arrow_upward