9. 大磯 虎ヶ雨(東海道五十三次:歌川広重)
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虎御前の涙・・・虎ヶ雨
手前に刈り取った耕地、宿場の入口付近でのにわか雨。左奥の沖合いの海は晴れ。晴雨の対象がおもしろい作品。左右に立て分け、左側に遠く臨む静かな海を描いたのに対して、右側に立ち並ぶ宿場町の店の重なり、折れ曲がった樹木などを巧みに描き入れ、画面の均衡を保っている。街道に沿って宿が連なり、寒さと雨を避けながらようやくたどり着く安堵感。右手には丸みをもつ高麗の山裾が描かれている。この山には『曽我物語』の曽我十郎と恋仲であった虎御前ゆかりの草庵があったとされる。「虎ヶ雨」とは虎御前が十郎を偲び流した涙を指し、十郎が討死した陰暦5月28日に降る雨のことをいう。また、西行法師が「こころなき身にもあわれはしられけり鴫立沢(しぎたつさわ)の秋の夕暮れ」と詠んだ、小余綾(こゆるぎ)の磯が画中左に広がる海岸である。
〈参考サイト〉
知足美術館「大磯 虎ヶ雨|東海道五十三次」(https://chisoku.jp/tokaido/08_oiso/)
文化遺産オンライン「東海道五宗三治之内 9 大磯<虎が雨>」(https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/252969)
東京富士美術館「東海道五拾三次之内 大磯 虎ヶ雨 | 歌川広重 | 収蔵品詳細」(https://www.fujibi.or.jp/collection/artwork/04329/)
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