6. 戸塚 元町別道(東海道五十三次:歌川広重)

江戸から十里半

 現在の神奈川県横浜市戸塚区。早朝に日本橋をたった健脚が、戸塚に到着する頃の夕景が描かれている。江戸から十里半で健脚の人の初日の宿になる。江戸を出て初めての峠道でかなりの難所であった。「こめや」の看板が目立つ茶屋は、米で作った餅菓子で有名な店。軒下には伊勢参りをする一団(講)の名前を記した木札が掛けられ、彼らの定宿にもなっていたことが分かる。図の中央に描かれている灯篭脇の石柱には「左りかまくら道」と彫られ、鎌倉方面へ行く分かれ道を示している。客を迎える女と馬から降りる旅人と館を、同じ目の位置から大きく動的に描いている。不器用そうに馬から飛び降りる仕草は滑稽味を帯びている。この版図には、さらに愉快な異版がある。画中、夕刻に馬を降りる旅人が、早朝、馬を乗る旅人に描き変えられた。度重なる改版は版元であった保永堂の意向が大きいと考えられる。

〈参考サイト〉

アダチ版画研究所歌川広重「東海道五拾三次 戸塚 元町別道」」https://store.adachi-hanga.com/products/uk_hiroshige018?srsltid=AfmBOor0h2KHEHKprB6Ca8M1B5btpyppoILPSpZ1ILYLU9FaD0oc7W8o

知足美術館「戸塚 元町別道|東海道五十三次」(https://chisoku.jp/tokaido/05_totsuka/

東京富士美術館「東海道五拾三次之内 戸塚 元町別道 | 歌川広重 | 収蔵品詳細」(https://www.fujibi.or.jp/collection/artwork/04326/

文化遺産オンライン「東海道五拾三次之内 6 戸塚《元甼別道》」(https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/238186

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