ビッグ錠

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【テーマ設定】

インタビュー計画概要:

大阪の貸本マンガ時代から、デザイン・風刺漫画を経て、東京の少年誌での成功に至るビッグ錠氏のキャリアを通じて、戦後マンガ産業の構造変化とジャンル(グルメ、業界もの)の成立過程を明らかにする

大テーマ:戦後マンガ産業の変容とビッグ錠の足跡ー大阪貸本文化から商業少年誌のジャンル開拓までー

中テーマと主な焦点:

1. 大阪貸本マンガ時代のコミュニティと制作現場(1950年代後半~)

「マンガ王国・大阪」の当時の熱気と、若手作家たちの交流に焦点を当てる。高校在学中のデビュー作『バクダン君』や、当時の大阪の出版社(研文社、わかば書房、日の丸文庫など)の雰囲気について伺う。また、川崎のぼる、園田光慶(ありかわ栄一)、さいとう・たかを等との交流や、短編集を作る上での分業体制(画面構成やカット画の協力など)、西宮での共同生活の実態についても話を聞く。さらに、当時の貸本業界を支えた編集者との思い出や影響についても伺う。

2. 「マンガ家」から「デザイナー/風刺漫画家」への転身と表現の拡張(1960年代中盤)

貸本マンガから少年誌へ直接移行するのではなく、デザインや風刺画を経由した独自のキャリアに焦点を当てる。商業デザインの仕事内容と、それが後の画面構成や視覚表現に与えた影響や、『MAD』誌から受けた衝撃と、そこから得たカートゥーン表現・パロディの手法について話を聞く。さらに、『平凡パンチ』や『プレイボーイ』など、成人向け雑誌で風刺漫画を描き始めた経緯と読者層の変化への意識についても伺う。

3. 少年誌への「再デビュー」と新ジャンルの確立(1968年以降)

「ビッグ錠」への改名後、『少年キング』『少年マガジン』などで「業界もの」「グルメ漫画」という新しいフォーマットを確立した過程に焦点を当てる。 ペンネームを「ビッグ錠」に改め、少年誌のフィールドに戻ってきた経緯と、貸本時代との意識の違いや、『釘師サブやん』に見られるような、特定の職業や裏社会を描く「業界もの」の企画経緯と牛次郎氏とのタッグについて伺う。さらに、『包丁人味平』における「料理対決」というフォーマットの発明と、それが後の『料理の鉄人』などのメディア企画へ与えた影響についても確認する。

期待される成果:

東京中心のマンガ史において見過ごされがちな、大阪の貸本出版文化(研文社、わかば書房)や、そこでの作家同士の「プロダクション的」な共同制作の実態が明らかになる。また、貸本劇画の「リアリティ」と、カートゥーンの「風刺・デフォルメ」が融合することで、いかにして『包丁人味平』のようなエンターテインメント性の高い「料理バトル漫画」や「業界漫画」が生まれたのか、その表現的ルーツが紐解かれる。さらに、貸本(個人/小規模)から商業誌(大量生産/マスメディア)へと産業が巨大化する中で、作家がどのように適応し、表現を変えていったかという産業史的変容の貴重な証言となる

【参考文献】

牛次郎. "心毒の海を渡る." カクヨムhttps://kakuyomu.jp/works/1177354054917851314.

牛次郎, ビッグ錠. "再び大阪がまんが大国に甦る日." 小説club 25, no. 8 (1972年7月): 150. https://dl.ndl.go.jp/pid/1785164/1/150.

全国貸本組合連合会発行. 『全国貸本新聞』. 復刻版. 不二出版, 2010. https://www.fujishuppan.co.jp/kindaishi/zenkokukasihonsinbun.html.

松本 正彦. 『再び大阪が まんが大国に甦る日』. 新なにわ塾叢書 6. 大阪: ブレーンセンター, 2014.

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