• 研究メンバー
  • 赤間 亮
  • 鈴木 桂子
  • 西林 孝浩
  • 金子 貴昭
  • 三須 祐介
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デジタル文化資源活用による海外日本研究者の育成とあらたな研究環境の提案

研究代表者:文学部 教授 赤間 亮

①研究分野
海外には、博物館・美術館・図書館、あるいは個人コレクションなどに所蔵されている"日本文化理解にかかわる文化資源"が膨大に存在する。本研究が対象とするのは、日本文化のなかでも、第二次世界大戦以前までに輸出された美術・工芸品(紙媒体の古典籍や絵画も含む)である。この分野は美術分野だけでなく、民俗、歴史、文学を横断し、かつ比較文化の観点からも研究される傾向にある。これらの分野を統合した協力者によって実現される研究であり、本研究拠点の情報基盤によって、容易に国際・学際的共同研究が実現できる。しかし、本研究の真の研究テーマは、これらの分野の研究への直接的寄与だけでなく、社会への応用的活用を実践することであり文化財の活用による「国際貢献」手法という研究分野に位置付けたい。

②研究内容
  欧米を中心として海外に所蔵される日本文化財は、輸出された時には、経済的にも文化研究にも大きな貢献をしてきた。しかし、それ以降一旦倉庫に収められてしまうと、人々はそれらの資源が持つ文化大使としての能力を忘れてしまった。これらの文化資源を網羅的にデジタル・アーカイブするプロジェクトを本テーマの代表者は実践してきたが、それらは各所蔵機関のもとにおかれていて、世界へのWEB発信はできていない。ボストン美術館、大英博物館、ライデン民俗学博物館、フリーア美術館、ヴェネチア東洋美術館、プラハ国立博物館、ベルリン東洋美術館などは、基本的にまだ学芸員の手元にデータがあるだけである。本研究テーマでは、こうしたデジタル資源のより効果的な活用を目指すものである。本研究は、以下のように進行する。
①海外の所蔵機関ですでにデジタル化されている日本文化資源のWEB公開に向けた、技術的・法律的問題の解決:立命館側がサーバー・データベースシステムを提供しクラウド型で配信する。
②各所蔵機関の学術連携を実現し、国内、あるいは地域、最後には全世界での組織間共同利用を実現する。
③連携機関をできるだけ拡大するために、デジタルアーカイブ事業を継続する。
④デジタル・アーカイブ事業については、各国から院生、若手研究者の参加を募り、謝金等による研究資金の循環とデジタル技術の教育を実現する。
⑤日本文化資源のデジタル化を実践できる人材育成により、さらにこれらの人材が国境を越えて連携することで、日本文化理解のための大規模な教育用WEBサイトを実現し、これをNPOとして運営することでさらに参加者の生活の保証できるよう基盤形成の支援をする。
⑥海外研究者による日本文化理解の成果を日本人に向けて発信する教養型WEBサイトを実現する。

③期待される成果又はその公表計画
 最近では、人文系各分野で、海外調査が比較的容易に実施できるようになったため、科研費等を使った個人的な調査や、組織の調査が、世界各国で行なわれている。しかし、同じ機関・同じ資料をめぐって、異なる研究グループ、個人が何度も訪問し、また科研費等の研究調書では、デジタル化やWEB公開を必ず書込んでいる。実際には、簡易なデジタルカメラによる個人研究用の撮影が行われているだけで、海外所蔵機関に対しては元より、日本国研究資金にとっても無駄が多く、効果的ではない。このタイプの無駄に対して効果を上げることができる。また、海外若手研究者による新たなタイプの研究活動を提案することができるため、研究者として継続できる機会の提供により、日本文化を理解する研究者育成に大きく貢献できる。なお、成果は何れも情報技術を駆使して、WEB発信を基本とするもので、またテーマ③との連携により効果的な情報発信が実現できる。なお、国際貢献の事例については、学会での発表により宣伝していく。