金丸座(旧金毘羅大芝居)CG仮想復元

  今回、デジタル・アーカイブの一環として3次元コンピュータグラフィクス(以下、3DCGとする)を用い、実測図を基にして江戸期の金丸座の様子の仮想復元をおこなった。

資料となった実測図は昭和51年(1976)の移築改修工事の際に作成された「旧金毘羅大芝居修理工事報告書」であるが、金丸座は江戸時代に建立されてから現在に至るまでのおよそ180年間、天災や人災等による被害をほとんど受けずに当時の面影を残しており、移築改修の際もオリジナルの雰囲気を保持した状態で工事がおこなわれた。今回のCG復元もこの実測図に基づいて忠実に作成し、江戸後期の雰囲気の再現を目指した。
3DCGを作成した手順は以下のとおりである。

①金丸座の現地調査。
 ・テクスチャ(模様)の写真撮影、各部材の位置関係調査などを実施。
②修理工事報告書の実測面から、柱や梁などの部材や空間の寸法の割り出し。
 ・実測図には全ての寸法は示されておらず、算出する必要があった。
 ・実測図だけでは把握できない部材の位置や寸法を、現地調査での写真から考察した。
③割り出した寸法を基に3DCGソフトで、ひとつひとつ作成したモデルの組み上げ。
 ・柱や梁などの部材の総数は数千に及ぶが、デジタルデータなので、同一形状の場合はコピー&ペーストを用いて作業の効率化を図った。
・作成の際の基礎となる地下室(奈落)・礎石などの土台→柱・梁→床板・天井板→壁→屋根→周囲の塀の順番で3Dモデリングし、それぞれの部材を組み上げた。
④完成したモデル表面に、テクスチャ(模様)を貼付け。
 ・テクスチャは基本的にデジタルカメラで撮影した写真を、必要に応じて加工し使用した。
⑤ライティング(光源)・カメラの設定
 ・光源には、曇り空と同様の効果を持つ面光源を用い、拡散相互反射でリアルな陰影を表現した。
⑥最終レンダリング(画像書き出し)
 ・①~⑤までの設定と効果を反映させ、最終的に一枚の画像を出力した。

 本モデルはデジタルデータベースとして、物理計算などと組み合わせて様々なシミュレーション利用や、仮想的に歌舞伎演目を再現したり、消失した芝居小屋建築復元の資料などとしての利用が考えられる。

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