瑜祇塔図 ゆぎとうず
一幅、南北朝時代
瑜祇塔は金亀の上に立つ多宝塔を指し、屋根の上に五本の相輪があるのが特徴である。元々のモチーフは、池に映った月と池の亀に立つ瑜祇塔というもの。亀に立つ塔のため「涌亀塔」とも呼称される。平安時代の実運(1105~60)撰『瑜祇経秘決』には、塔の下の「金亀」が「世界建立」を表し、塔の上の五本の相輪(「五峯」)に布された梵字が、金剛界三七尊を表しているという。これにより、「一切衆生自身成仏表示」するものと説明され、本図と同様の図が描かれている。本図には、嘉禎4年(1238)5月に伝受した際、原図に記載されていた説明が写され、さらに建武元年(1334)7月、阿闍梨堅信が伝授した旨が記されている。本図の外箱には後生の文字で「舎利塔図」との銘がある。これは亀が舎利塔を背負っている彫刻の唐招提寺蔵「金亀舎利塔」(国宝)などの舎利塔を踏まえたものと考えられる。しかし舎利塔には、本図のような五本の相輪はないため、本図は瑜祇塔と考えられる。亀が塔を背負う点は「金亀舎利塔」と同じ構造であるが、異なる系統の塔であり、亀の解釈については、異説が挙げられている。