諺紫田舎源氏
にせむらさきいなかげんじ
画題
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解説
東洋画題綜覧
柳亭種彦著の草双紙、三十八編百五十二巻よりなる、紫式部の源氏物語を翻案したもので、時代を足利時代に取り光の君を足利光氏とし多くの女性を配してゐる、唯源氏物語の光の君は享楽遊蕩の気分のみであるのに、光氏の方はその享楽三昧も宝物詮議の為めとしたなど、武家時代の匂ひが添加され、全編の構想も千変万化なので、非常に歓迎され、殊に奥女中などの間に多くの読者を有してゐたといふ、併し、全篇の完結に至らず、槙柱に至つたまでで種彦は病の為めに死去した。
その挿絵は国貞の画くところで、これまた非常の好評を博したが、唯に挿絵のみでなく、錦絵としてもこれを画いたもの多く行はれ、殊に光氏と黄昏道行の場、即ち古寺の件など画趣深く描かるゝもの多い。
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)