花瓶の桜
はながめのさくら
画題
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解説
東洋画題綜覧
清少納言が『枕の草子』の一節、桜に関する情趣深き一段として人口に膾炙せられ、絵画にも画かれてゐる。
清涼殿のうしとらの隅の北のへだてなる御障子には荒海の絵つきたるものどもおそろしげなる手長足長をぞかゝれたる、うヘの御局の戸押しあけたれば、常に見ゆるをにくみなどして笑ふ程に、高欄のもとに青き瓶の大なる据ゑて、桜のいみじく面白き枝の五尺ばかりなるを、いと多くさしたれば、高欄のもとまでこぼれ咲きたるに、ひるつかた、大納言殿、桜の直衣の少しなよらかなるに、濃き紫の指貫、白き御衣ども、うへに濃き綾の、いと鮮かなるを出して参り給へり。 (枕草子)
これを画ける作
冷泉為恭筆 『瓶の桜』 藤田男爵家旧蔵
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)