梨
なし
画題
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解説
東洋画題綜覧
梨は支那を原産とする薔薇科の植物で高さは二三丈に達するが、果実を主として栽培する時は枝を撓めて棚作りとする、花は雪白で五弁、葉は桜に似てゐるが、先の方光り、山桜のやうに開花の時、枝頭に若葉が出る、その花の清楚な処から古来、詩歌文章に、絵画等に描かるゝこと極めて多い。
梨の花、世にすさまじく怪しきものにして、目にちかく、はかなき文つけなどだにせず、愛敬おくれたる人の顔など見ては、たとひにいふも、実にその色よりしてあいなく見ゆるを、唐土にかぎりなき物にて、文にも作るなるを、さりともあるやあらんとて、せめて見れば、花びらのはしにをかしきにほひこそ、心もとなくつきためれ、楊貴妃、皇帝の御使に逢ひて泣きける顔に似せて梨花一枝の春の雨を帯びたりなどいひたるは、おぼろけならじと思ふに、猶いみじうめでたき事は類あらじと覚えたり。 (枕草子)
なほ支那では芍薬、海棠、月季、木槿、木芙蓉と共に『六妍』の中に数へ、『三十客』の中には『渓客』となつてゐる、果実もよく描かれるが花の方が多い。
銭舜挙筆 『梨花小禽図』 前田侯爵家旧蔵
陸包山筆 『梨花黄鳥図』 故土田麦僊氏旧蔵
徽宗皇帝筆 『梨花練雀』 井上辰九郎氏旧蔵
最近には左の作がある。
松本姿水筆 『梨の花散る夕』 第三回帝展出品
根本霞外筆 『梨花淡月』 第十回帝展出品
林司馬筆 『梨花』 第十一回帝展出品
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)