賢木
さかき
画題
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解説
東洋画題綜覧
『源氏物語』の中の一帖、光源氏の君二十三歳、六条御息所は姫の斎宮に立ち、伊勢に下向するので、附添うて伊勢へ下らうと、暫し野宮にあつて潔斎する、そこへ源氏の君が訪れて来て、別れを惜しむ、この冬桐壷の帝崩じ源氏の失意時代が来るが、間もなく朧月夜のもとに通ひはじめて弘徽殿太后の憤をうける、『さかき』賢木の巻の名は、左の一節から来てゐる。
花やかにさし出でたる夕月夜に、うちふるまひ給へるさま、にほひ似る物なくめでたし、月比のつもりをつぎ/\しう聞え給はんもまばゆきほどになりにければ、榊をいさゝか折りても給へりけるを、さし入れて変らぬ色をしるべにてこそ、忌垣をも越え侍りにけれ、さも心憂くと聞え給へば、
神垣はしるしの杉もなきものをいかにまがへて折れるさかきぞ。
と聞えたまへば、
をとめこがあたりと思へぼ榊葉の香をなつかしみとめてこそ折れ
大方のけはひ煩はしけれど、御簾ばかりはひききて長押におし懸りて居給へり。
『賢木』の巻を画いたものでは、昭和十年五月戊辰会に長野草風の作があり、又古く宇喜多一蕙にその作がある。(神戸田村氏蔵)
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)