待宵小侍従
まつよいのこじじゅう
画題
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解説
画題辞典
待宵小侍従は歌人なり、近衛天皇の皇后多子に仕ふ、石清水八幡検校紀光清の女にして、母は小大進なり、干家物語にいふ、皇后后嘗つて侍従に謂う、曰くて待宵と後朝と孰れか楽しきき、侍従詠して曰く、
待宵に深けゆく鐘の声聞けば あかぬ別の鶏は物かは
或はいふ、此歌後徳大寺左大府の詠なり、侍従大府と契あり、文の時の歌是れなりと、是より人呼て待宵小侍従といふ、恋歌多し、画かるゝ所亦少しとせず。
(『画題辞典』斎藤隆三)
前賢故実
(『前賢故実』)
東洋画題綜覧
待宵小侍従は歌人で、元は阿波の局といひ高倉院に御宮仕してゐた、母は建春門院の小大進である、その和歌に秀でてゐたこと、『平家物語』『源平盛衰記』に見えてゐる。
待宵の侍従と申しける事は、此徳大寺左大将忍び通ひ給ひけり、衣々に成暁又来ん夜をぞ契給ひける、侍従は大将のこんとのたのめし兼言を其夜ははる/゙\待ち居たり、さらぬだに深〈ふけ〉行く空の独寝はまどろむ事もなき物を、たのめし人を待わびて深行鐘の音を聞き、いとゞ心の尽きければ、
待つ宵の深〈ふ〉け行くかねの声聞けばあかぬわかれの鳥は物かは
と読たりければ、誠に堪ずもよみたりとて待宵とは被呼けり。 (源平盛衰記第十七)
大和絵の好画題とて画かる所多い。
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)