破来頓等絵巻

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はらいとんとんえまき


画題

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解説

画題辞典

祓とん/\絵巻、又不留房給詞ともいふ、不留房と呼ぶ一僧が、一切の執着を放棄せるによりて。仏の浄土に往生することを得たりといふ説話に基きて図を構へ、或は世間の名聞を欲するものゝ妻子財宝の為に繋縛さるゝ苦痛、又は不留房が財産宝を棄て一躍仏土に入らんとする様など画きしものなり、その名つけて破来頓等といふ所以はその詞書にころもゝ破来頓等、我が身も人も破来頓等、若きも老いたるも破来頓等、上﨟も賤も破来頓等、法師等ひとりも破来頓等、きたりし時も独りぞ破来頓等、去る時も独りぞ破来頓等、はじめも独りぞ破木頓等、終りも独りぞ破来頓等、信傍ともに破来頓等、くづし合せて破来頓等、無我になりなん破来頓等、魔郷にはとゝまらじ破来頓等、かどなき珠の盤にころぶぞ破来頓等、智識なりけり破来頓等、心をはなて破来頓等、左右の手をはなし破来頓等人になるぞ破来頓等、南無阿弥陀仏になれや破来頓等とあるより来る。源を鳥羽僧正に発し洒脱を極めた絵巻なり、原本は尾張徳川耕作家の所蔵にして摹本は東京帝室博物館に在り、給ほ飛騨守惟久の筆、詞書は世筆寺卿行平の書と伝へらる。

(『画題辞典』斎藤隆三)

東洋画題綜覧

絵巻物の名、原本一巻は尾州徳川家に蔵し東京帝室博物館に摹本を蔵してゐる、『祓とんとん絵巻』又『不留房絵詞』ともいふ、その内容は不留房といふ僧が一切の執着を棄てゝ仏の国に入ることが出来たといふ説話に基いて画いたもので、或は妻子、財宝の為めに繋縛されてゐ名る名聞家の苦痛を比喩的に叙したものとも見える、その詞書に

ころもも破来頓等、我が身も人も破来頓等、若きも老たるも破来頓等、上臈も賎も破来頓等、法師ひとりも破来頓等、きたりし時も独りぞ破来頓等去る時も独りぞ破来頓等、はじめも独りぞ破来頓等、終も独りぞ破来頓等、信傍ともに破来頓等、くづし合せて破来頓等、無我になりなん破来頓等、魔郷にはとゞまらじ破来頓等、かどなき珠の盤にころぶぞ破来頓等、知識なりけり破来頓等、心をはなて破来頓等、左右の手をはなし破来頓等、人になるぞ破来頓等、南無弥陀仏になれや破来頓等

とあるので『破来頓等絵巻』といふ、画の筆者は古来飛弾守惟久と伝へられ、詞書は世尊寺行尹といはれてゐる、鎌倉末葉若くは南北朝の頃の作なるべく、筆致瀟洒磊落、絵巻中異色のあるものとされてゐる。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)