白箸翁
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しらはしのおきな
画題
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解説
前賢故実
姓名、郷里不詳。貞観末、平安市中で白箸を売っていた。白くて柔らかい頭髪を持ち、衣服や靴を整えず、いつも古くて黒い単衣を着て、夏も冬も着替えをしなかった。白箸翁は七十歳と自称していたが、市中の八十歳の人は「わたしは子供の時から翁を知っている。その服装や容貌が今と変わらない。」と人に語っていた。人から酒や食べ物を頂いたとき、量について聞かず、満腹して酔い始める頃にまで食べ続けた。時には数日飲食をしなくても、飢餓しているような顔色がなかった。わがままになったり慎んだりして、感情が一定でなかった。のちに市の門のところで病死した。市中の人々は、翁のことを憐れみ、その遺骸を東河の東に埋葬した。二十年後、ある僧が南山の石室で翁を目撃し、いぶかって「お元気でしょうか」と翁に問うと、翁はほほえんで答えなかった。そしてどこかへ行ってしまった。これを聞いた者は、不思議なことだと感心した。
(『前賢故実』)