催し内部の構造

提供: ArtWiki
ナビゲーションに移動 検索に移動

総合

五番立(ごばんだて)

(のう)の曲を、五種の類型に分類し、その類型から一曲ずつを選び、五曲をひとまとまりの組み合わせとしたものを五番立という。またそのような組み合わせで、決まった順序で能を上演することも同じく五番立という。その五種の類型は、それぞれ次のような順序で、以下のように呼ばれている。

  1. 脇能(わきのう)
  2. 修羅能(しゅらのう)修羅物(しゅらもの)とも)
  3. 鬘能(かずらのう)鬘物(かずらもの)とも)
  4. 雑能(ざつのう)
  5. 切能(きりのう)

上の五種類は、「(しん)(なん)(にょ)(きょう)()」と呼ばれることもある。またさらに、それぞれ次のようにも呼ばれる。

  1. 初番目物(しょばんめもの)
  2. 二番目物(にばんめもの)
  3. 三番目物(さんばんめもの)
  4. 四番目物(よんばんめもの)
  5. 五番目物(ごばんめもの)

五番立の分類は、室町時代の番組(ばんぐみ)などから、すでにそれに結び付くと思われる能の曲の分類・順序が確認できるが、五番立が正式に行われるようになったのは、江戸時代以降、能が幕府の式楽とされてからのことである。江戸時代に版行された五番綴謡本(ごばんとじうたいぼん)の各冊の曲目は、この五番立に即したものが非常に多い。

このように、江戸時代には、演能は五番立で行われることが多かったが、現代では、一度の催しに五番の曲が演じられることは珍しく、多くても三曲までの催しが大半である。しかし、そのような現代の催しでも、曲目の上演の順序は、五番立の順序に倣っており、その順序が崩されることはまずない。

翁ナシ(おきななし)

能楽の催しの一種である。

翁付(おきなつき)であるべき催しの最初に《(おきな)》が上演されない場合に演じられるもので、ワキ方(わきかた)の重い習事(ならいごと)である。

置鼓(おきつづみ)囃子(はやし)で登場したワキが、通常は《翁》のシテが舞台先で行う深々とした礼を行い、同じくシテが着座する場所である翁の座に着座する。その後、常座(じょうざ)へ出て[真ノ次第(しんのしだい)]の囃子で正面の方へ出て、[次第(しだい)]の謡を謡う。

翁付(おきなつき)

能楽の催しのうち、最初に《(おきな)》が上演される催しをいう。特に翁付という場合は、翁の次に上演される脇能(わきのう)を「翁付脇能」と称して、ワキの登場前に音取(ねとり)置鼓(おきつづみ)と呼ばれる特殊な囃子(はやし)が演奏される。また通常は[次第][名ノリ]と続く脇能の冒頭の小段構成が[名ノリ][次第]の順になる。

付祝言(つけしゅうげん)

能の催しの最後に、脇能(わきのう)の終曲部などのごく短い謡を地謡(じうたい)が歌うこと。能が終わりシテ(して)ワキ(わき)が退場した後に地謡が歌い出す。催しをめでたく締め括るために歌われるものである。

歴史的に見ると、付祝言の原形は、江戸時代に行われていた祝言能(しゅうげんのう)であると考えられる。江戸時代には催しの最後に、特にめでたい祝言能と定められた曲を半能(はんのう)の形式で上演することがほとんどであった。この祝言能を簡略化したものが、現在の付祝言であると考えられる。